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ロマンの木曜日
 
日本アルプスから甲子園を応援したい


アルプススタンドではなく、日本アルプスから応援します。

甲子園球場にある段の高い応援席を「アルプススタンド」という。高校野球の中継で、生徒の応援が放映されるゾーンだ。
高さ14.3mしか無いのに、アルプスとは大きく出たものだ。日本アルプスの最高峰は、山梨県・北岳の3193m。その差は230倍もある。「アルプス」とは、少し言いすぎなんじゃないだろうか。

どうせ応援するなら、本当のアルプスから応援したい。僕は応援道具をそろえ、友人たちと日本アルプスの頂上を目指した。

加藤まさゆき



まずは道具をそろえます

高校野球の応援、といえばこの格好だろうか。


白いポロシャツ、チューリップハットにメガホン。

白のポロシャツは持っている。ユニクロで買った。
続いて帽子。これは登山帽のうち、もっともカラフルなもので代用した。ゴアテックス製で5000円くらいしたが、雨のときは雨具にもなるので重宝する。


ここまでそろった。

最後にメガホンだ。
メガホンぐらいそこらで売っているだろうと甘く見たら、なかなか売っていなくて困った。おもちゃ屋にも、雑貨屋にも、100円ショップにも無い。よく考えてみれば、僕がこれまでの人生でメガホンが必要になったことなんて一度も無い。そりゃ売ってないよな。
ふと、実家のそばに野球用品店があったのを思い出したので、ダメ元で行ってみた。


都内ながら、丸刈りの野球少年たちがよく集う。

あっさり売ってた。1本460円。

メガホンは野球選手用というより、野球を応援する人用なのだけど、一応売っていた。足は運んでみるものだ。友人用のものも含めて3本買った。

これで道具は完璧。友人たちにも白のポロシャツを持って来るようにメールで伝え、僕ら「アルプス応援団」3人は、新宿7:03発の「特急あずさ」に集合した。


あずさ、という名の愛人ができたら「あずさ2号」と呼んであげたい。

 

アルプス応援団を紹介します

今回同行してくれた友人を紹介しよう。


左がシュン君、右がコヅカ団長。

僕を含めて3歳の頃からの幼なじみだ。じつは僕らは大学4年の頃に3人で登山チームを組み、ぼちぼちと、へなちょこ登山を続けてきた。これまで日光や富士山なんかに行ってきたが、アルプスは初挑戦となる。

この応援のために、事前に十分な会議(飲み会)を重ね、用意をしてきた。ちゃっかり帽子の色がそろっているのも、会議のときに3人おそろいで買っておいたためだ。


甲府駅に到着。装備の中、メガホンだけが少しおかしい。

ここから先、頂上に着くまでは、僕らアルプス応援団の、純粋な夏の思い出となるので、青春アルバムっぽい写真ダイジェストでお届けしてみたい。


 


より大きな地図で 甲府駅から登山口まで を表示


 

より大きな地図で 北岳山頂まで を表示

おそろいの派手な帽子とメガホンが目に付くのか、いろんな人に声をかけられた。

ある人には「山岳パトロール隊ですか?」と聞かれた。「いえ、応援団です」と答えると、いろいろめんどくさくなるので、適当にお茶を濁しておいた。

「そのメガホン、何に使うんですか?」というのも、何人ものひとに聞かれた。
「頂上でこだまに挑戦します」とか「クマ避け対策です」とか、そのたびに適当にごまかしたが、本当にクマに出会ったときにメガホンで大声を出したら、たぶんクマは逆上して襲ってくると思う。

また、「ブブゼラです。」という答えも用意しておいたのだが、そろそろ半分くらいの人がブブゼラのことを忘れていると思ったので、言うのは控えておいた。

今年は残雪が多く、ルート変更を余儀なくされた。そういえば今年は、4月になってから記録的大雪が降った。もうみんな、そんなことも忘れている。
で、この変更して行ったルートが超つらかった。カラコロ鳴ってぶらぶらするメガホンが邪魔で、何度捨てようと思ったかわからない。
途中、大学のワンゲル部みたいな若者の一行とすれ違ったが、男子は100リットル、女子でも70リットルの巨大なザックを背負っていた(僕らのザックは50リットルしかない)。男子はもちろん、女子でさえも「もう、あたし限界!限界っ子!」とか言いながら、笑顔で登っていった。若いということは素晴らしいことだと、しみじみ思った。

そして歩き始めて6時間、標高3000メートルちょうどの山小屋に到着した。限界だ。今日はここに泊まる。

日の出。応援を忘れそうになるぐらいに美しい。

アルプス応援団の朝は早い。

夜明け。
山の朝は早く、朝4時にはみんな行動を開始している。ちょっとした戦場のように慌しい。
僕らも急いで起きて、眠い体に朝飯を詰め込み、白のポロシャツを着込んでメガホンを各自携え、準備を整える。
目的のアルプス山頂まであと193メートルだ。


朝4時に二人を起こす。日常だったら確実にキレられる。
山小屋のメシは、地上で食うメシの10倍くらいうまい。

最後の193m。といっても、ビルだったら50階ぐらいある。

朝の5時に、50階建てビルを階段で駆け上ることなんて無いだろう。

あと少し! ちっちゃく人が群れているところが頂上。

着きました! 日本アルプスの最高峰、北岳山頂です!!

 

絶景の中、応援団にチェンジ

さすが日本アルプスの最高峰、風景はまさに絶景。


南の方角には、アルプスの尾根がずーっと続く。あ、だからここが「北岳」なのか。

下界はずっとずーっと雲の海。遠くに富士山が頭を出しているのが、見えますか?

そんな絶景の中、僕らはいそいそと白のポロシャツへと着替える。


徐々に周囲の目が集まるが、気にしない。

 

東東京代表・関東一高を応援する

僕ら地元の今年の代表校は、東東京代表・関東第一高等学校だ。同級生で行ったやつも何人もいて、応援にも熱が入る。
届け! アルプス最上段(最高峰)からこの応援!


関東一高のぉ〜〜、勝利を期してぇ〜〜、(僕が応援団長のイメージ)

ふれっ!ふれっ! 関一! ふれっ!ふれっ! 関一! それーっ!

ふれっ!ふれっ! 関一ぃぃぃ!
かっとばせ! かっとばせ!

打て! 打て! 関一!
ナイスショート! ナイスゲッツー!!

あと一人! あと一人!
よっしゃーー! 勝ったぁぁぁーーーー!

おめでとう! 関東一高!

夏山はいいよにゃ

この原稿を入稿した時点で、関東一高は1回戦、2回戦を勝ち抜き、破竹の快進撃で駒を進めている。僕らの応援が届いたのだろう。
甲子園のことはさておいて、夏の山は他に類を見ないくらいアミューズメント性の高いスポットだと思う。

雪渓から流れてくるリアル「南アルプスの天然水」は冷たくって目が覚めるほどおいしいし、高原植物の花はここぞとばかりに咲き誇りまくってるし、地上と違ってめちゃくちゃ涼しいし、本物の天国のようだ。

この夏山の素晴らしさよりも、「山は危険と隣り合わせ」的なことがニュースで強調されているのは、ちょっと残念に思う。それはそうなのだけど、でも、そんなにでもないですよ。

このぐらいのメジャーコースなら、普通の体力とそれなりの計画性があれば普通の人でも十分登れると思うので、あまり気負わずにぜひ夏山に行ってみて下さい。

関東一高も頑張れよな!!

 
 

 

 
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