上は昭和6年2月8日の朝日新聞。これだけでなく、特に昭和5〜7年頃には「どりこの」の広告が頻繁に登場する。
不況下だけあって、小さな掲載スペースに簡素なコピーを用いただけの広告が多い中、「どりこの」の広告は、どれも2分の1ページないし1ページを使い、無数のコピーと情報をちりばめた贅沢なつくりとなっている。そこに踊るのは、不況下であることを全く感じさせない景気のよい文言。
「驚くべき大売行!」
「発売早々熱狂的大歓迎!四方より感謝状山のごとし」
「刻々激増する大注文! 全工場あげての大努力!」
「昭和の寵児!どりこの時代来る!」
「国を挙げて賞賛、大歓呼!」
さらに、その味についても以下のような表現が用いられアピールしている。
「大好評! 冷たき一杯は正に味覚の王! 夏の飲み物としてこの上なし!」
「どこへ行ってもどりこのは大人気です。トテモ偉い評判です。こんな美味しいものを飲んだ事がないと感謝激賞の書状山積のありさまです」
激賞、激賞の嵐である。まさに「もうかって仕方ない」と、ひとり笑いが止まらない様子を読み解くことができる。
「どりこの」は栄養ドリンク
ところで、どうやら「どりこの」はただのジュースではなく、滋養強壮剤らしい。「飲むと直ちに血となり精力を増す新滋養料」とある。今でいうユンケルみたいなものか。
他、広告から読み解くところによれば「どりこの」とは
・万人向きの理想的滋養ドリンク
・主成分はブドウ糖、果糖、アミノ酸で、とても甘い
・色は眩しいほどの黄金色
・原液をお湯や水で5倍程度にうすめて飲む
・開発したのは医学博士の高橋孝太郎氏
・値段は1瓶1円20銭(送料は18銭)
・販売元は出版社の講談社
この時代に1円20銭は、そこそこの高額商品。ユンケルでいえばシリーズ最高値の「ユンケルスター(4000円くらい)」である。ユンケルはビジネスマンがここぞの局面で飲むイメージだが、「どりこの」は高額にも関わらず、子供から大人まで日常的に飲まれていたようだ。 |