中学でお世話になった美術部の先生に宮田くんというのがいた。
ある日宮田くんが「おにぎりをな、上下左右から圧力かけてぐぐぐーっと握りこんでいくと、一口で食えるくらいの大きさにならんかなあ」とポロッと言ってたことがあった。
それは限界がすぐくるからならんやろ、と言っても「なるんちゃうかな〜」とまだ考え込んでいた。
あれから14年。おれも宮田くんと同い年になった。しゃあないな、宮田くん。そのおにぎり、おれが作ったる!
(大北 栄人)
おにぎり屋さんへ
実験に必要な材料を買出し。せっかくなのでおにぎり屋さんでおにぎりを調達することにした。
毎日その日のうちに握るというおにぎりだったが、実験をする明日の定休日。たらこだったら一日くらいは大丈夫というので今買って帰ることにした。
おにぎり屋さんに「できるだけ固くして」
おにぎりってどこまで小さくなりますか?と本職の人に聞いてみた。「さすがに私もやったことはないんですけど」と笑っていたが、まあひとまわりくらいは小さくなるんじゃないか、との答え。
焼きおにぎりなんかは固めに握るらしいが、基本は軽めに握るという。口の中でほぐれやすくてその方がうまい、と。うむ。想像通り。
今固めにしておきましょか?とありがたい申し出で、何回もむすびなおしてくれた。本職の人が握りこんだおにぎりだ。これは大切にせんと。
先に謝っておきます
宣伝になるからいいですよー、と協力してくれたのだが、このあとこのおむすびがえらいことになる。
ごめん、おむすび屋『結処』。宣伝にはなりませんでした。お米もたらこもうまかったです。
『おむすび処 結処』 東京都世田谷区梅丘1丁目13-10 03-5450-0632
体積を計ろう
「おにぎりがどれだけ小さくなるか?」が知りたいのだから計るのは体積だ。
体積?ユリイカ、ユリイカ。水をいっぱいに張ったおわんにおにぎりを沈めて、あふれでた水を計ればいいんですな。
これが大体の人の共通認識なんだろうけど、のちのちえらい目に合う。
そしていよいよ限界に挑戦する
まずは固めににぎってもらったおにぎりをさらに固めに。
おにぎり屋さんは自分の握ったものだから握り込みにも遠慮があろうというものだが、こっちは実験道具としてしか見ていないのだ。
有望な少年少女を集めて超能力を鍛えまくる軍部のような気持ちでいる。このおにぎりを『AKIRA』と名付けよう。
押し寿司の要領でさらに圧縮する
どうやったら小さくなるか?で思いつくのは、箱に入れて圧力を加えていく方法だろう。
そう思ってこわれなさそうな金属の箱を探したのだが、ちょうどいいものが見つからない。ないなら作る、が原則だけど工作しやすいのは木だ。木の箱って丈夫にできるの?
お店の人に相談したら「金具で補強をするべき」というヒントをもらった。なるほど、木で箱を作って、金属で強度を出すのか。
よっしゃ、と思って夜なべして作った。木ねじは計88本使用。