オルガンというのは大ざっぱにいうと、笛の束だ。押された鍵盤によって決まった笛に空気を送ることで、音を出している。
直接弦をはじくギターとか、直接管を吹くラッパとかに比べて、仕組みの複雑そうな鍵盤楽器。しかしことオルガンに関しては、わりにシンプルな原理である。だったら自分で作れるんじゃないの?そう思うじゃないですか。
それが甘かった。この記事は「シンプルと簡単は違うぞ」という教訓をこめた、イソップ童話的教育記事である。
そんなわけで、手作りオルガン製作、始まります。
(text by 石川 大樹)
まず笛を作ろう
せっかくの手作りオルガンである。全ての部品を自作したい。上に「オルガンは笛の束」と書いたが、まずは笛の一本一本から作っていくことにしよう。
簡単な笛の作り方はいくつかあるのだけど、今回は台所にある身近な素材を使うことで、楽器製作と縁遠い主婦層の心をもわしづかみにしていきたい。
いつも吸ってばかりいるストロー、たまには吹いてみてもいいだろう。
ストロー笛は小学校の理科だか図工だかの時間に作ったことがある人もいるかもしれない。ストローに切り込み入れて、なんかピラピラしたものをつけるだけで笛ができるのだ。
ピラピラは、ピラピラしてさえいればなんでもいいのだけど、今回はOPP袋を使った。ここまでできたらあとは吹けばビーって鳴る。ピラピラがリードの役目をしているのだ。
後半、3本つづけて吹いているところは、たくさんの笛を使い分けることの大変さを表現した。これが鍵盤で操作できたらどんなに楽だろうか…という流れで今回の企画に説得力を持たせるつもりだったが、とがったストローの先でのどを突き、軽く涙もにじませる事態となった。出鼻から釘を刺された気分だ。「主婦層の心をわしづかみ」とか調子に乗ったこと言ってすみませんでした。
鍵盤の試作
のどへのダメージと引き換えに笛ができたので、今度は鍵盤を作ろう。押しているときだけ空気を送るようにする仕組みが少し悩ましいが、僕が考えたのはこうである。
笛にキャップをかぶせて、ホースで空気袋とつなげておく。
鍵盤が上がっているあいだは、鍵盤がホースを押しつぶしているので空気が通らない。(左)
鍵盤を押すと、ストローのほうまで空気が通るようになって、ビビビビって音が鳴る。(右)
この説明で「あ〜なるほどね」って思った人へ。その先にあるのは崖だ。そして崖へ続く道の先頭には、意気揚々と歩く僕がいます。
ともあれこの時点では崖の存在に気づいていない僕。まずは1本作ってみよう。
もう鍵盤の仕組みができた!こんなにトントン拍子で進んでいいのだろうか。
いま写真を並べながらそんなことを思ってしまったが、考えてみたらここまでで丸2日くらいかかっている。全然トントン拍子ではない。写真って思い出を美化しますよね。
ケースに入れる
次は鍵盤を固定するためのケース作り。今回は中の仕組みがよく見えるようにスケルトン仕様にしてみた。
最初の鍵盤が完成
あ、オルガンだ。(いまあなたの想像力が試されてますよ)
そして試奏!
余裕のアイス(3日目の夜)