ロシアも征したその臭い
ビンの外へもすでに匂うあの香り
正露丸はかつて「征露丸」、日露戦争の戦勝にあやかって命名されたというのは有名な話だが、たしかに、あの臭いだけでロシアに勝てそうな勢いはある。海外旅行に持って行った日本人が、異臭騒ぎで連行されることもあるという噂だ。 その臭いがしないように糖衣錠にした「正露丸糖衣錠」をわざわざ噛み砕く僕は、馬鹿だ。戦時中だったら非国民とそしられるかもしれない。 まあいいや、今の日本は平和だし、臭いで明日、職場で鼻つまみ者の扱いを受けてもなんとか我慢しよう。さあ、僕は噛む! いきます、「正露丸糖衣錠」!
ぱくり! カリッ!
辛ッッ! 臭ッッ! 辛ッ! 臭ッ! 辛! 臭!
辛い! そして臭い! 臭いのは覚悟の上だったのだが、辛い! ものすごく辛い! 薬品で舌を焼かれるような、痺れるような強烈な辛さ。矢も盾もたまらず洗面台へと駆け込んだ。
辛い、臭い、辛い、臭い、辛い。
口の中はアリナミンのときと同じくらいの大混乱である。まさかこんなことになるとは。 正露丸が辛かったのは想定外だった。臭いと苦味に対する覚悟を固めて噛んだだけに、想定外のところから不意打ちを喰らった状態になったため、総崩れ状態、桶狭間の戦い@僕の口内であった。 そして匂いのしつこさは、さすが正露丸だけあって、長い。アリナミンの苦味よりも長く、この文章を書いている今でも口の中に残る。これはアリナミンを上回ると言っていいだろう。
辛みと臭さの2項目が測定不能。
今ここに、「噛んじゃいけない糖衣錠・王者」の座を僕の心の中でアリナミンから正露丸糖衣錠へと譲りたいと思う。
結論
僕はただ、糖衣錠の中身がどんな味かを知りたかっただけだ。あの甘いコーティングの下を知りたかっただけだった。それがどうしてこんなことになってしまったのか。 今となっては後悔している。 それでも身をもって分かった確かなことがひとつある。 それは、糖衣錠はどれも、決して噛んではいけない、ということだ。(あたりまえ) なんだかこれがトラウマになって、しばらくクロレッツみたいなタイプの、糖衣ガムも食べられなさそうな気がする。
今回、さすがに怖くて噛めなかった糖衣錠(下剤)