3Dプリンタのデモ風景
以前、工作機械の展示会を取材したときに、3Dプリンタなるものを見せてもらった。
樹脂を使って物の断面の形を印刷し、それを何層にも重ねていくことによって、最終的に立体を完成させる、という技術だ。
今回の記事は、僕がその3Dプリンタのマネをしたり、ダンスを踊ったりする日記です。(えっ、ダンス!?)
(text by 石川 大樹)
3Dプリンタのすごいアイデア
3Dプリンタはすごい。確かにすごいんだけど、このすごさって、なんというか、「その手があったか!」みたいな発想のすごさじゃないだろうか。そりゃ技術的に難しい部分もあったとは思うのだけれども、それ以上に「プリンタで3次元をつくる」っていうアイデアがすごいと思うのだ。
逆に言えば、このアイデアさえあれば、実現はそんなに途方もない話ではない気がする。たとえば僕でもできるんじゃないでしょうか。たとえば絵の具とかで。
俺にもやらせろ
要は「樹脂の重ね塗りで立体ができるんだからよ、俺が絵の具を何重にも塗り重ねたらよ、立体ができるんじゃねえの?」という話だ。
小学校の図工の時間を思い出してほしい。使ったパレット、何日か洗わずに置いて放っておいたら絵の具がカピカピになって、時にはゴロリとした塊ができていたはずだ。今回はあれを樹脂の代わりにするのだ。
こういうの
つまり、絵の具を塗る→固まる→その上にまた塗る…の積み重ねで厚みを出していき、立体をつくりあげようという試み。
今回の作業は、地味だ。ただひたすら塗って、乾かして、塗って、乾かして…。もちろん一日二日でできるとは思っていない。予定工期は5日間。長期戦の構えだ。
ということで作業をそのままお伝えしても地味すぎるので、人間3Dプリンタこと石川の過ごした5日間を、日記形式でお届けしたいと思います。
今回は、世界初の、プリンタが書いた日記です。
3/25(水)
15:00〜 粘土で形を設計
そんなわけで、重ね塗り生活1日目だ。午前中は材料の買い出しやら他の事務作業に費やしたので、作業着手は午後から。
まず最初にやることは、型作りだ。3Dプリンタは断面図を重ね合わせて立体を作っていくので、断面の形がわからないと塗ることができない。
今回はいったん粘土で立体を作って、それを切って断面を調べることにした。
ちなみに今日は編集部の安藤さんに、別冊アットサーチの記事の検索係を頼まれている。随時メールのやりとりをしつつ、作業をすることになった。
安藤さんからの呼び出しがあればすぐに検索で対応する
メールの受信って、画面を見ていないと気づかないものだ。粘土細工に夢中になっていたら、安藤さんの質問を10分以上放置していたりした。そんなときは、10分間がんばって検索していたフリをした。
頭身おかしい
できた。実はここまでやるのに3時間くらいかかっている。これまで、僕は当サイトで何度か工作の記事を書いているが、いざ物を作り始めてから毎回思う。「図画工作のセンスがない!」
とはいえイマイチなりに一応完成したので、モデルはこれを使うこととする。ズボン→上半身→頭と順にサイズがでかくなっている気がするのだが、まあいいことにした。顔が似てないとか似てるとかも、まあいいことにした。
「まあいいことにした」。この一言で人生はたいてい乗り切れる。(そんなことばかり言ってるからセンスが身につかないのかもしれない)
「モデルは俺」と言ったが、正直これだけの形を作る自信がないので、もっとシンプルな形も用意しておくことにした。上の写真のとおりの、4つだ。
断面図に切り分ける
粘土がちょっと固くなるのを待って、輪切りにして断面を調べる。これが後の設計図になるのだ。
並べると…
いびつ!四角すいなので断面図は全て正方形になるはずだったが、なんか長靴みたいなのやナメクジみたいなのが出現した。しかしここも「まあいいや」の精神で。
ひととおりの断面を並べてからパーツのメモを記入していると、編集部の橋田さんがやってきて「楽しそう!」と言った。
たしかに上の写真を見るとすごく楽しそうなのだが、そう見えるのはたぶん小麦粉粘土の色がカラフルだからで、3Dプリンタの成功にはまったくつながらない。
19:00〜 塗り重ねスタート
さて、ここからが本番だ。いよいよ塗りの作業に入る。
絵の具はアクリル絵の具を使った。木曜ライターのべつやくさんが「アクリル絵の具がいい」と言ったからだ。なぜいいのかは詳しく聞かなかった。伸びないタイプの生徒だ。
なるべく絵の具をいっぱい付けて、一筆
地味な色味。石川が黄土色なのは靴底の色です
もうひとつの課題
ところで、今週の僕は大きな二つの課題を抱えている。ひとつめは、この絵の具造形を完成させること。もう一つは、ダンスの練習だ。
3/28に行われるプープーテレビのDVD発売イベント内、テングマンショーにて、僕はダンスを披露することになった。
僕はダンス経験はもとより、あらゆるスポーツ経験がない。しかしさかのぼること2日前、テングマンのプロデューサーである住さんから送られてきた台本には「石川、モーニング娘。のザ☆ピース!を踊る」とさらりと書かれていた。あまりの突拍子のなさに、冗談だろう、と思っていた。
乾燥時間の節約のためにウチワを導入。YoutubeでPVを見ながら
その後、僕は住さんに別件で、デザイン作業の依頼のメールを送った。まもなく返信が来て、そこにはこう書かれていた。「アイコンの件、特に料金をいただくなくても大丈夫ですよ。つきましては、ザ・ピースのダンスをマスターしておいてください」。そんなバーター、聞いたことない!
うん、冗談じゃなかったみたいだ。あの台本は冗談じゃなかったし、僕としても「冗談じゃない!」という気分だ。今週といってもあと3日しかない。初めてのダンス、3日でマスターしなければいけないのだ。
フテ寝
ダンスのことばかり考えていたら、世界遺産が大変なことになってしまった。その文化的価値はともかく、2塗り分くらいの層が剥がれたのは痛い。塗って乾かして塗って乾かして、30分ほどの作業時間のロスだ。
こうやって一進一退しつつ、だいたい10回くらい塗り重ねたところで、夜も更けてきたので帰宅した。絵の具セットは家に持ち帰りだ。