「くさや」をご存じだろうか。独特の香りが特徴の魚の干物だ。いま独特の香り、といったが、これがネーミングの由来ともいわれていて、なんというかこう、ようするにくさいのだ。くさい、だから「くさや」。
正直僕も興味はあったがまともに食べたことがなかった。今回くさやの発祥の地で本場のくさやを買い、そのへんの公園で焼いて食べたので報告させてください。
うまいんだ、これが。
(安藤昌教)
発祥は都内でした
くさやの発祥の地は東京都内だった。なんと、結構手軽だ。なのになぜ今まで目にする機会がなかったのか。
それは都内は都内でも離島だから。
ここ新島は都心から南へ約160q、伊豆諸島を構成する島の一つだ。東京都新島村。この島でくさやは作られている。
島を自転車で走ってみるとたまに干し網を見かけた。
しかし特にくさくない。
あの干し網でくさやが干されているのだとしたら、もっと町中がにおってもおかしくないはずではないか。それともくさや、実はそれほどくさくないのだろうか。
集落にはくさやの看板を掲げたお店が何軒かあった、が、閉まっていた。
新島は夏のシーズンを過ぎると観光客はほとんど来ないのだという。たぶんいま島にいる観光客は僕一人なんじゃないかと想像する(そしてたぶんその想像は当っている)。
おみやげ屋さんにはくさやが置かれていた。置かれてはいたが、誰も(店員さんも)いないので買えなかった。
この後も町中を自転車で走り回り、なんども同じおじさんに話しかけられたが、くさやのにおいはしてこなかった。商店には干物がうられているが、くさやはおみやげ程度の扱いのようだ。
くさやの里へ急げ
ここ新島のくさやは知る人ぞ知る逸品で、都内をはじめ全国的に人気のある珍味だと聞いていた。島で楽しむだけならばともかく、他にも出荷しているからにはどこかで大量に作っているはずだ。地下か、地下にあるのか。
商店のおばちゃんに訪ねてみた。あの、くさやってどこで作られているんでしょう。
「空港に行く途中にあったでしょう、くさやの里ってのがさ。」
確かにあった。空港から町までは歩いてきたのだが、その途中に確かに「くさやの里」と書かれた石碑が建っていた。石碑といえばここ新島には実にさまざまな石碑が建てられている。別の機会に紹介したいとは思っているが、一つだけお見せしよう。
石の話になると長くなるので機を改めたい。ではさっそく見に行ってみよう、くさや工場を。