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ちしきの金曜日
 
傷ついて嬉しい特殊メイク入門

後半はモザイクなしでお届けします。

映画に何を求めるか、というのは人それぞれだろうけども自分の場合はストーリーよりもビックリでありドッキリだ。「うわ、こんなの見たことない!」てのが一つか二つあれば大体満足。そういう体質になったのは子供の頃見た映画の影響が強いように思える。たとえば『スターウォーズ』『ET』『グレムリン』などなど。当時からするとビックリの塊みたいなものが続々出てきた時期だった。いわゆる「特殊メイク」。とりあえず血のりとか欲しがったり。

伊達ワルメイクとかには興味はなくても、特殊メイクは一度やってみたい、という男は多いはず。たまたま知人のスペースで簡単な特殊メイク教室が開催されると聞いて参加してみることにした。今日から俺もスクリーミング・マッド・ケムタだ!

ちなみに教室の方向性上「グロい」といえなくもない映像が出てくるのはご容赦ください。でも、ただの粘土の塊みたいなのがグロいと思えるまでの物になっちゃう‥ってのに結構感動するんだって!

大坪ケムタ



メイクといっても塗るだけではないのです

今回参加させてもらったのは特殊メイク・特殊造形アーティストのゼライ直井さんが主宰するイベント「特殊メイクナイト」。毎月初心者向けの特殊メイク教室を開催しているゼライさんによる出張版イベント、という形。会場は以前「あの携帯ゲーム機を手作りで」の時もお世話になったTショックさんだ。

直井さんは学生時代から独学で特殊メイク・造形を始め、その後オーストラリアに渡り修行を重ねる。帰国後は映画からTV・CM、舞台などの特殊メイクを担当。代表作を見ると『ゴジラvsビオランテ』から『バカ殿様』までと幅広い。


講師のゼライさん。赤目はメイクじゃなくてカメラのせいです。
スクリーンでまずは特殊メイクの歴史から。

ちなみに右上写真のスクリーンに映ってるのは大人計画の特殊メイクを担当した時に手がけた阿部サダヲさん。特殊メイクというと映画をイメージしますが、今や芝居のようなライブなものにも結構登場してるんですな。

さてイベントの前半はゼライさんによる「特殊メイクとは?」についての講義。1920年代の毎日8時間近くかけてメイクしていた時代から、中にロボットが仕込まれた最新技術のものまで、実際の映画を見ながら説明してくれるので非常にわかりやすい。『エクソシスト』の神父が全編特殊メイクとか知らなかったよ!

ちなみにこの日の生徒4人(自分含む)は全員メモを取るほどマジメだったので、リアルに講義ぽい雰囲気。特に女性ふたりは特殊じゃない方のメイクに携わってる人だそうで、なるほどそりゃマジメに書くわな。


大きく分けてこれだけの種類。
実際の素材に触りながら学べます。

面白かったのが普通新技術が生まれると古い技術は廃れていくものだけど、現在でも特殊メイクは戦前と最新の技術を上手く組み合わせて使ってるのだそう。たとえば「アプライアンス」と呼ばれる顔に直接ラテックスで作った素材を貼っていくメイク法は基本的に70年近く変わってないのだとか。


実際の人から型をとるダミーヘッド。
こちらは頭にかぶるラバーマスク。

実際映像を見ながらゼライさんが話してくれるので分かるのは、特殊メイクは普通の人を異形にメイクして終わり、ではないということ。たとえば人間が狼男に変身するシーンを映画で撮るとなると「変身前」と「変身後のメイク」だけあればいいというわけにはいかない。

変身してるように見せるには、変身中のメイクや造形を何パターンも作られる。それも動きがある所だとメイクやラバーマスク(いわゆるかぶり物)で見せ、顔の細部を見せる時にはダミーヘッド(生首の人形)で見せたりと変身過程の見せ方に向いたメイク・造形を細かく作り、それを編集で繋ぐことで、あたかも生身の人間が変身してるように見せる。そんな様々なパターンを特殊メイクアーティストは作れなきゃいけない。一種類のメイクだけ出来てもダメなんですな。

とか授業の話を書いていくと、その日のメモ全部書いちゃうことになるので、そろそろ後半の特殊メイク実践編!に行きたいと思います。ここからちょっと目に痛いですよ!


これがアレになっちゃうんです。

 

 
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