小さな力で大きな物を動かす原理、てこ。生活に密着した物理の代表ともいえるこの原理、ピンセットからピラミッドの石運びまで、さまざまに応用されてきた。
このてこ、でかい石を動かせるのならば一人飛ばすことくらい楽勝なんじゃないのか。
そう思って試してみたが、そう簡単にはいかなかった。物理学の難しさを体と心で感じたある秋の週末の記録です。
(安藤昌教)
基本は「てこ」
物理の基礎といえばやはり力学だ。なかでもなじみ深いのがこの「てこの原理」ではないか。小さな力で大きな物を持ち上げる、あれだ。
子供の頃、このような仕掛けを作っていろんなものを飛ばしたものだ。授業中、先生が黒板を向いている間にはキン消しが教室内を飛び交っていたのを思い出す。
今回はこのてこの原理を使って人を飛ばしたいと思う。いま人ごとみたいに言ったがもちろん飛ぶのは僕だ、ほかにいない。今回の目的は自分の力で自分を飛ばすことだ。
しかしそもそもてこで人は飛べるのだろうか。考えてみよう、上のてこで石が飛んだ、これをそのままスケールアップしたらでかい岩だって飛ぶはずだろう。
岩が飛ぶなら、人も飛ぶのではないか。
この論拠がどこで破綻しているのか、今回の記事ではそこを解き暴いていく。
てこに必要なのは支点、力点、作用点の3点。簡単にいうとこの3つの点に力が加わることでただの棒がてこになり人が飛びうる。
今回はわけあって(わけ=会社にヘルメットを忘れてきた)材料選びから強度を意識して真剣に行った。実は先日怪我にも適用される保険に入ったのだが、効力を発揮するのは11月になってからだとわかってびくびくしているのだ。
選んだ道具を持って、近所の公園へやってきた。ここで今回僕は飛ぶ。
人がいないだろうと思って日曜の早朝を選んだのだが、すでに子供が遊んでいた。こいつら、徹夜なのか。
近所だし今後のことも考えてできればあまり人目につきたくなかったのだが、荷物が重く、他へ移動するのも面倒だったのであきらめてここで決行することにした。
はたして僕はてこでぶっ飛ぶことができるのだろうか。