東京から新幹線を使えば1時間半、わりとすぐにたどり着く温泉地だ。手軽。しかし失礼を承知で言えば、地味な温泉地である。まあ、ひなびた、とも言い換えられるだろう。
ただ、情報によると、そんな地味でひなびたこの町に、およそ20件ものせんべい屋さんがあるという。
はっきり言って、「磯部せんべいめぐり」にそんなに熱意があったわけじゃない。いわば普通の “鉱泉せんべい” 、温泉水を使って焼いたせんべいだ。食べたことはある。うまくて興奮の果てに「ひゃっほう!」とか「むふー」とか声が上がるかといえば、そういうものでもない。
でも軽い歯ざわりがあとをひく、何枚食べても飽きない味でもある(と言うより、食べたら止まらない感じ)。それならば、大きくないこの町でしかも20件、ならちょちょいっとまわって来て、せんべい比べでもすれば1本記事が書ける。うはうは。なんて考えていた。
宿に荷物を置き、鼻歌交じりで出掛けてみた。 |