エオリアン・ハープとは
エオリアンハープは、とてもシンプルな楽器だ。風の通る場所に弦を張っておくと、風の力で弦が振動し、音が生まれる。ただそれだけ。演奏者が音程を操るしくみもなければ、自分で音を鳴らすことすらできない。
杉山さんによると、もともとは17世紀頃にヨーロッパで流行したものだそうだ。当時は公園や家の窓なんかに置かれていた。音が鳴るも鳴らないもすべて風まかせのこの楽器、いわゆるコンサートで演奏されるような楽器とはちがい、日本でいえば風鈴に近い存在だったようだ。
しかし一時は大流行したエオリアン・ハープも、ある時を境にぱったりと途絶えてしまった。藤枝研究室で研究を始めたのは今から5年ほど前で、17世紀の大流行からは数百年も後。その時すでにエオリアンハープは「伝説の楽器」みたいな状態で、「そういうのがあったらしい」という文献情報だけは残っているものの、作り方どころか、どんな音が鳴るなのかすらよくわからなかったという。そこから、材料選び、作り方、設置場所など試行錯誤を重ねた結果、やっとできたのが今のエオリアン・ハープだ。
なんだ、このロマンチックな話。インタビューはじめて早々、いきなり飛び出したのがこんな、歴史ロマンにエジソン的な発明物語がハイブリッドしたような壮大なエピソード。初っぱなから僕のハートもわしづかみにされてしまった。 |