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ロマンの木曜日
 
アウト・イン・アウト生活

限界ギリギリのコーナーリング中

歩いているとき、クルマを運転することありませんか?

などと、いきなり意味不明の問いかけをされても困ると思いますが、僕はいつも、歩いているときにクルマを運転しています。

そして、最速の男を目指して常に限界にチャレンジし続けているのです。

萩原 雅紀



何を言っているのか

のっけから心配させるような発言をしてしまいました。

これはひょっとしたらクルマが好きな人にしか分からないかもしれませんが、普通に歩いているとき、あたかもサーキットでレーシングカーを運転しているかのようなシミュレーションをするのです。

つまり、直線は(気持ちの)アクセル全開。目の前にコーナー(曲がり角)が迫ると、ブレーキングポイントを見極めて一気にブレーキング(減速)。ブレーキロックに(頭の中で)注意しながら、同時にギアを5速から4→3→2と(心の中で)落とし、全体の荷重をフロント(2本足だけど)へ。ステアリングを(心の中で)切り込むと同時に(気持ちの)アクセルオン。若干リア(2本足だけど)を流し気味にクリッピングポイントを通過し、ふたたび(気持ちの)アクセルを全開にして、外側の縁石いっぱいまで(イメージで)使って、直線へ。常にアウトインアウト、スローインファーストアウト。

たとえば、職場でトイレに行くときに角を曲がるだけでも、これだけの緊張感と集中力を持って歩いて行くわけです。

でも、やっぱり文章だと説明すればするだけ意味不明ですね。というわけで画像で説明するとこんな感じです。


迫る左コーナー ブレーキング! シフトダウン!(のフリ)
コーナー出口に神経を集中 クリッピングを通過してアクセルオン! イン側にどれだけ寄れるかが鍵
僕には見えているアウト側の縁石 アウトぎりぎりいっぱい! 無事にコーナーをクリア!

決して漏れる寸前なのではない

もっと解らなくなったかも知れません。なので動画も用意しました。


わずかにミス!

どう見ても普通に歩いている人ですが、これがたとえば実際にハンドルを握っているような仕草をしてしまうと、大人として明らかにまずいので、運転のアクションは自分の脳内で完結させるべきです。

でも、普通に歩いているように見えて、心の中では激しく自分やまわりの歩行者と闘っている人、きっと少なからずいるんじゃないかと思っています。


階段は腕の見せどころ

日常生活において、運転歩行の技術的にもっとも難易度が高いとされているのが下りの階段です。特に普通のビルに設置されているような、折り返しながら昇り降りするタイプの階段はヘアピンの連続で、プロとアマチュアの差が顕著に出るところと言っていいでしょう。


ビルやマンションによくある階段

踊り場と踊り場の距離にもよりますが、このタイプの階段は常に同じ方向へのカーブが続くので、理想としては(車)体は常に中心方向を向いたまま、下りの直線部分も後部を流したまま通過したいところ。イメージとしてはF1よりもラリーです。


体を中心に向けたまま降りてくる 手の形がなんなのかは気にしないでください テールスライドしたまま目線はコーナー出口へ

これも分かりにくいと思うので動画を観てください。


何回も撮り直したので若干疲れがみえます

たとえ同僚とすれ違っても、なんかちょっと急いでいるんだな、くらいで気にも留められないでしょう。ただし、人によっては「流しっぱなしで抜けてきたぁ!」などと気づかれることがあるかも知れません。

そういう人とは、後々オフィス内において無言の歩行バトルの勃発は避けられないでしょう。


ドキドキの信号スタート

レースは常に(頭の中で)行われているので、外を歩いているときでも気は抜けません。特に神経を集中させなければならないのは信号です。

せっかくポールポジション(横断歩道のいちばん前)を獲得しても、スタートで出遅れてしまったら水の泡です。目の前を横切る車道の信号が赤に変わるのを確認したら、正面に光る歩行者用信号に集中。青に変わると同時に最初の一歩を踏み出せるように、コンセントレーションを高めます。


レースで言うところのグリーンフラッグ(スタート準備OKのサイン) 各車エンジン音が高まる!

すばらしいスタートで後続を引き離す!

 

歩行者とデッドヒート

信号でスタートダッシュを決めたあとも、街に溢れる歩行者はみなライバルです。ブレーキングやアクセルワーク、コーナーリングで前を歩く人との差を詰め、直線でうまくスリップストリームを使って抜いて行かなければなりません。


スリップストリームから抜けたー!

 

決定的に足の長さが違ったり、自転車に乗った人などはスピードで敵わないこともあります。そういう場合は「あの人はカテゴリーが上なんだ」などと考えて自分を納得させます。さっきまでF1だのラリーだの言っていたのに、自分が不利になると急に混走レースの概念を持ち出したりしますが、もちろん脳内レースなので都合良く変えてOKです。


この人はGT500クラスなのだ(自分は300クラス)

もっと細かくシュミレートしたいときは

ただ歩くだけなら、どんなクルマも乗りこなすドライバーにもなりきることができますが、もっとリアルにクルマの挙動を感じたい。そんなときは、少し工夫をするとクルマの特性を劇的に変えることができます。

ちょっと重めの荷物を入れたナップザックを用意し、これを背中に背負えばミッドシップ(エンジンがドライバーの後ろにあるクルマ)、前に背負えばフロントエンジン(エンジンがボンネットの中にあるクルマ)を体感することができます。分かりやすい違いは、コーナーを曲がるとき、ミッドシップは後ろが外側に流れる感覚になり、フロントエンジンは前が外側に流れる感覚になります。

これは実際のクルマの感覚にかなり近いと思うので、ぜひやってみてください!ぜひ!


スピンするー ハンドル切っても曲がらないー

ただし、単なる酔っぱらいだと思われる危険性もあるので注意が必要です。

そのほかにも「ウエットコンディション(つまり雨の日)はタイヤ(靴底)のグリップに注意を払う」とか、「お風呂の湯船に浸かる時はF1マシンのコックピットに乗り込むイメージで」とか、「誰もいないところでスピンしてクラッシュして悔しがる」など、人には言えない(でも書いちゃった)シミュレーションはいろいろあります。


ところで、この企画をデイリーポータルのネタ会議に出したところ、ほとんど誰にも理解してもらえず、逆にそんなこと考えているのかとドン引きされてしまいました。やっぱりか。僕はおかしいのか。そう思った瞬間、その場にいた一人から「僕もやりますよ」との声が!

その声の主は―。


工藤さん

そう、このサイトのライター陣でいちばんクルマに詳しい、編集部の工藤さん。

というわけで、次ページでは工藤さんのアウトインアウトっぷりを見せてもらいたいと思います。


 

 
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