「笛」と聞いてたいていの人が連想するのは、リコーダーかフルートだと思う。リコーダーの長さは30センチ、フルートの長さは70センチくらいだ。
一方、金管楽器(いわゆるラッパ系の楽器)だと、巻いている部分を伸ばすと、長さはトランペットで135センチ、ホルンでなんと360センチもある。
笛、負けてるな。よし、笛も伸ばそう。
(text by 石川 大樹)
伸ばすったら伸ばすんですよ
いきなり誰の共感も得られそうにない始まり方で恐縮ですが、今回は笛を伸ばす企画だ。それ以上でもそれ以下でもない。おなかが空いたらご飯を食べる。笛が短ければ伸ばす。己の欲望(あるいは思いつき)に忠実にしたがうのみだ。
例によって塩ビパイプを使います
伸ばす方法はいろいろありそうだが、今日はもっともシンプルに、管を継ぎ足すことにした。管には、以前サックスを作ったときと同様、塩ビパイプを使うことにした。
長さはひとまず打倒ホルンということで4m。長すぎたらあとで分解して縮められるように、2m×1本、1m×2本、をつなげて4mの管を作る。
最後に、管の端にリコーダーのマウスピースをはめる。内径16ミリのパイプに、リコーダーのマウスピースはジャストサイズであった。この偶然!「笛を伸ばす」なんて突拍子もないことを思いついたのは、もしや天命だったのかもしれない。
4mリコーダーできました
とりあえずできた。一息つきながらできた笛を眺めてみて、普通のリコーダーが4mでない理由がよくわかった。いや作る前からわかってたけど。小学校の音楽でこれを使うには、体育館くらい広い音楽室が必要だ。放課後はランドセルにリコーダー差して帰ったものだけれども、こんなの差してたら笛の重みで倒れる。それか電線に触れて感電とか。
重いわ、たわむわ、かさばるわ、なにも考えずにとりあえず伸ばしてみたら、いかにも「なにも考えてない」感じの楽器になってしまった。ホルンは長いけどクルクル巻いてあって機能的だなあ。それにひきかえ、僕の笛はまさに「愚直」という言葉がよく似合う。
「二階から目薬」ということわざがあるけれども、今回は「二階から笛」。意味は、「欲を出して笛を伸ばしすぎると、20秒のセルフタイマーの間にたくさん階段を登らなければいけなくなって、疲れる。しかも間に合わなくて撮影失敗する回数も増えて、何度もやり直しているうちにますます疲れることになる」。そんな戒めのことわざだ。
さて息も上がってきたところで、次ページではいよいよ音を出してみます。予想を大幅に裏切る、ものすごい音なんだこれが。