なにが元ネタかは知らないが、「おれ色に染める」というセリフを聞いたことがある。
意味はたぶん自分の物にするとか支配するとかだと思う。それを意中の女性とか治安の悪いスラム街とかで言うんだろう。ハードボイルドだ。
そこで剛の者を標榜する僕もおれ色に染めてみたいと思うが、染める女性も荒れ果てたスラム街も近くにない。あったところで染められるわけがない。そんなことしたらエライことになる。
僕でもおれ色に染められる物を消去法で探していった結果、Ｔシャツなら出来るということで Tシャツをおれ色に染めてみようと思います。
（小柳 健次郎）
おれ色の作り方
「おれ色に染める（Tシャツを）」と言ったけど、そもそもおれ色って一体どんな色なのか。色彩に関する本を読んだところで、当然どの本にもおれ色の定義なんて載ってないだろうし。
しょうがないのでおれ色の作り方は自分で考案することにした。方法は至ってシンプル。人の特徴が最も現れるのは顔だから、その顔をぐちゃぐちゃに混ぜて顔の平均の色を出す。
そうして出てきた色がつまり「おれの色」だ。
驚くほど地味だ。いや自分が地味な存在だということぐらい分かっていますが、色彩的にもこんなに地味だったなんて凹む。鼠色だし。しかも薄いし。
でもハデな虹色とかになってもそれはそれで嫌だからこれでちょうどいいです。
おれ色（鼠）にＴシャツを染める
おれ色が分かったところでおれ色の染料を買いに行く。
お店で迷わないようにおれ色をプリントして持っていくことにした。プリントしたおれ色を外で見ると、モニター上で見たおれ色に比べて白く見える。
自分もまだまだ捨てたもんじゃないなと思いました。
それで染料とTシャツを買ってきました。
さすがに鼠色なんて染料はなかったけど、パールグレーという色が近かったのでそれで染めようと思います。
おれの色は鼠色。なんていうと凹むが、パールグレーだとかっこいい。「おれの色はPearl Grey」英語表記もさまになる。
じゃあこのさっそくこのＴシャツをおれ色に染めてやるぜ。
Ｔシャツを入れたらムラにしないために２０分ほど攪拌しながら漬けておく。
ただし今回作ったおれ色は写真を混ぜたものなのでムラが出てる。なので今回の場合、ワザとムラが出来るようにあまり攪拌しないで置いておこう。決してかき回し続けるのがめんどくさいわけじゃありませんから。
２０分後、Tシャツを取り出した。この時点では思いのほか濃いグレーに見える。あの「おれ色」に近いかどうかはいまはまだ分からない。
最後に外で陰干しする。
そして翌日。
最初に顔をかき混ぜて作ったおれ色に比べると若干色が薄いくて青っぽい仕上がり。思いの外Tシャツとしてまともな爽やかな感じになってて、これを「おれ色」と言い切ってしまうのは少し照れくさい。
ただ所々に謎の赤い点が付着しており、それがおれ色っぽさを助長させている。
おれ色に染まったTシャツが出来て満足。ただよく考えたらこういう色のTシャツたくさん持ってた。自然におれ色を集めてたのか。
世界はおれ色に染まってた
おれ色に染まったTシャツを作って満足したところで気づいた。この色は街の至る所で見かけてる。電柱とかアスファルトとか。
自分がそんな存在だとは思ってもみませんでした。
あなたの街もおれ色に染まってる
Tシャツをおれ色に染める体験を通して、自分の色は実際の人生以上に地味で、でもその地味なおれ色は世界を染めてることに気づくことが出来た。きっとあなたの街も僕の色に染まってる。
でも僕のおれ色が鼠色なのは髪の影響がほとんどだと思うので、ほとんどの日本人のおれ色は鼠色なんだろう。イカしたあいつもおしゃまなあの子もみんなみんな鼠色の世界。それで良いと思う。
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