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フェティッシュの火曜日
 
ピカピカのおじさんと別府、地獄。

活躍しすぎて後にビールとなった油屋熊八さん

油屋熊八さんを駆け足で説明する

愛媛に生まれ大阪で株取引で財を為し、財を失い、アメリカにわたる。別府で旅館をやっていた奥さんのもとに帰ると商才を発揮し大活躍、人を多く呼び込んで別府を国際観光都市に押し上げる。

東京に帰ってきて図書館で調べようと思い、司書さんにうちにはないがこんな本(論文)が出てるみたいと紹介されたのが『油屋熊八伝説の生成』というものだった。すごい!伝説なんだ!と驚いたところで、あ、もう一冊ありますねー、と教えてもらったのが『油屋熊八伝説を疑う』という本で同じ著者のものだった。一体、著者に何があったのか。もやもやっと黒い雲が立ち込めた。

 

生産者の声(私が作りました)的な一遍上人

現実から3センチ浮いた街

ところで油屋熊八という人は明治44年に別府にやってきたのだが、もちろんその前から地獄はあってもくもく墳気をたてていた。

鎌倉時代に一遍上人が開発したことを「私が鎮めました」というポスターで知った。野菜などの食品は「私が作りました」だが、温泉は「鎮めました」になるのか。

その後別府に桟橋ができて電車もできる。ちょうどそのころ熊八さんも来て観光地化に拍車をかける。洋風意匠の店舗が増えたり、私設遊園地ができたり博覧会が行われたり。どんどんどんどんできてくる。

そうして現実から3センチくらい浮いた、嘘みたいな街ができていったのではないかと想像をする。


駅近くの商店街で見かけた天狗みこし

 

別府の街をおもいながら、そっと顔をはめ

お、天狗みこし。

商店街をぶらぶら歩いていると、お、天狗みこし。お、とか言ったわりには初見ではあるけれど間近で見るとなるほどこれは天狗みこしとしか言いようがない。むしろみこしであることを忘れるほど天狗インパクトが強い。

この天狗みこしができたのは昭和48年。わりと最近だけどもこういうインパクトのあるものができる風土がここにあったんじゃないか。「日常的ハレ空間」(※1)と言われてなるほどと納得できる空気が何か充満しているのだ。

 

そしてやっぱり地獄へ

セックスコンピューター占いというのがある、とネットで仕入れた情報をたよりに秘宝館(エッチな博物館)に行ったりもしたのだけど、ここで紹介できるわけもなく。

入 り口でエッチなくじびきを引かされそうになって、その後とうとつに猫がいて、出口にあった目当てのコンピューターも売り場のお母さんが言うには「壊れてま すので代わりにエッチなくじびきやっていきませんか?」と無限ループに陥りそうだったのでほうほうのていで逃げてきた。

逃げた目の前には地獄があった。何だかすごいぞ別府。


これが地獄である(写真は鬼山地獄にて)

 

地獄

地獄というのは温泉の墳気が上っているのを見るところであって、入ったりはしない。温泉ってなんだろう?と一昼夜煮詰めて考えたあとで鍋の底に残った「温泉ハードコア」のようなものかもしれない。

要は熱すぎて入ったら死ぬ温泉。それがなんで地獄なのかといえばこの見た目だからだろう。

別府の鉄輪温泉というところにこの地獄がいっぱいあってそこをめぐるのが地獄巡りである。これが目玉となって別府は観光都市化していったらしい。

ここに行くと普通に観光してしまうのだろう、と危惧していたが目の前の湯気を見たらもうめぐらざるを得なかった。こんな風に人は湯気を目の前にして地獄に足を踏み入れてしまうのだろう。


秘宝館近くの白池地獄から地獄めぐりを始めたのだが
とうとつに熱帯魚を紹介されたりします

 

地獄と熱帯魚の唯一の接点かと思われるピラニア

分かったような分からないような地獄

うっすらと知ってはいたが目の当たりにしてやはり驚いた。地獄の中に熱帯魚館があるのだ。「地獄=見るだけの温泉」ではあるが、それだけじゃあなんでしょう?という別府のサービス精神がうかがえる。

次に出てくるワニもそうだが温泉のお湯を入れて温度調節をするらしい。だから熱帯魚か。理屈はわかるのだが、だとしても何でだ。温泉目当てに来て熱帯魚を見ている今は何だ、と実際に見ている時は嘘みたいな時間が流れる。


 

 
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