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フェティッシュの火曜日
 
ピカピカのおじさんと別府、地獄。
別府の地獄とは「入ったら熱くて死ぬので見るだけの温泉」のこと 


大分県につれてこられたものの、取材するものを見つけてこなかった。

見たいものといえば別府の地獄くらいなものなんだけれど、それにしたって湯煙風景が見たいだけで、余りにも有名だしふつうに観光してしまいそうな気がする。

どうしようかなと思っていたら、とりあえず行ってみるといいよ、と同行の人が言ってくれたので別府に行ってみることにした。

そうして別府駅に着いたのだが、まず銅像が変だ。

(text by 大北 栄人 )



どうした別府!?

ガーン。なんだこのおじいちゃんは!?
マントにひっつかまってるのは子どもかと思ったら鬼っ!
マントの中にも鬼っ!

一体どうしたというのだ!?

「金色のおじいちゃんが鬼をひきつれて楽しそうにこっちに迫ってきています。それはピカピカのおじさんです。」こんな文章が英語の教科書に出てきたらどうするだろう?

とまどうだろう。勉強どころでないだろうし、偏差値が下がるだろう。このままだとお母さんに怒られるだろう。

そして今はそれが英文どころでなくて現実に起こっている。

どうしよう。僕はどうしよう、と思ってとりあえず絶望した。絶望とはちょっと違うかもしれないが、ガーン。と目の前がまっくらになった。

多分お母さんに怒られるくらいではすまない、退学処分だ、とそのときの僕は思ったのではないだろうか。

 

 

説明を読むと、別府観光の立役者といったところだが…

観光都市・別府といえば油屋熊八

よく見てみると、銅像の横には説明文があってこの人はどうやら別府観光の立役者らしい。「湯は別府」と書いた標柱を富士山頂に立てたのだという。何てすてきなんだろう。これはぜひともおともだちになりたい。

見た目に惑わされたが、なんだかふつうにおもしろい。ふつうにおもしろがっていいものなのか、と安心したところでもう少し油屋熊八さんと別府にいれこんでみることにした。

結局はただぶらぶらしてきただけのことなんだが、現実離れした街の空気をとっぷり味わってきたので、少々お付き合いねがいたい。

 

別府という街

別府は温泉でしょう。と、僕のもってる別府の知識はだいたい9文字くらいで片がつくものだった。同行してくれたライターの斉藤さんが言うには、温泉だと最近は湯布院などが人気で、別府は大型バスでツアー客がガーッとくるイメージだという。

あ、ストリップ小屋とかがあるような温泉地か、と思った(実際にあった)。なんだかエッチな感じもただよう、いい感じのいかがわしさがあるところか、と思ったら駅前にエッチなビルがあった。


無言になる中学生ズ(写真左:T・斉藤さん37歳・右:石川さん27歳)

あ、ふつうだ!

エッチなビルがふつうだった<

やっぱりそうだった(こじつけだけども)。これが別府のスタンダードかと勝手に納得した。こうした勝手な推測も旅気分のひとつとしてお許しいただいて、古くからの温泉地には性も笑って娯楽にかえる包容力がある。

熊八さんも自分の旅館に若い女中さんをやとい、晴れ着を着させてお色気作戦で客を呼んだという。その後の地獄巡りバスツアーにもホテルのメイドさんをガイドとして連れ立たせた。これが日本のバスガイドの発祥なんだという。

「地獄めぐりは美人のサービス、亀の井バスで」という看板を別府駅に立ててたらしいのでもちろん確信犯でえらい。


 

 
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