暖かくなってくると街に漂う匂いも強くなってきます。梅に桜、そしてコインランドリー、と色んな匂いが立ち上がります。
花の話をしたり写真を使って始めてみましたが、今回のメインは思いっきりコインランドリーの匂いです。すいません。好きなんです。フェティッシュの火曜日なんです。
目一杯そんなランドリー臭をかぎまくりたい、そしてそもそもコインランドリーの匂いとは一体何なのかが知りたい、と突き詰めていったら意外なところに着地した顛末をどうぞ。
（text by 大北 栄人）
みんな大好き（だといいな）なコインランドリーの匂い
僕が言うコインランドリーの匂いとは乾燥機の匂いのことだ。乾燥を終えて扉を開くとほんわかわ〜んとした匂いが出てくるあれだ。
僕はこれが昔から好きで、かぐたびに近所にあった銭湯の隣のコインランドリーの換気扇を思い出す。そこからぶわーっと乾燥機の排気が行われていてこれがもうたまらなく好きだったのだ。
ということでこの匂いを好きなだけかぎたいのだけれども…
いい匂いは高いところに
もちろんドラムの中もいい匂いがするのだけど本命は上だ。
乾燥機の仕組みとしては、ガスを燃やして熱風が出てドラム内の洗濯物を乾かし、ダクトへ空気が流れる。ドラム内の香りはその空気の残り香なのだ。
ところがそのダクトの先は…と見ると、これがまた高いところにあるので困った。思い出のランドリーでは小学生の顔に当たるくらいの位置に排気口があったのだ。
人類はまだ進化できる
キリンは高いところにある葉を食べるために進化したという（諸説あるが）。同様に僕も高いところにある匂いをかぐために鼻を伸ばす必要がある。
「君のために僕は鬼になるよ」とは漫画『編集王』で厳しい現実を前に編集者がロマンを捨てたときの台詞だが、同じ感じでゾウになってみようと思う。
「君（乾燥機）のために僕はゾウになる」と書くとよく分からなくなるが、とにかく今回に関しては本気だということを分かってほしい。
鼻を伸ばす工夫
ゾウの鼻は作ることにした。さまざまな筒があるお店で素材を物色する。かぐ。素材自体に匂いがついていては台無しだ。塩ビはダメ、木も匂いが強くて…人の目も気にせず手当たり次第かぎまくる。
当然だが筒をかぎまわるなんてはじめてでドキドキした。
そして、これは…と当たったのがクーラー用のホース。部屋に空気を送り込む用途なので匂いも少ないのだ。なるほど、とちょっと感動さえした。
鼻にあてる部分にはビニール素材でアタッチメントを作った。手で押さえる必要はあるものの、これで100％ホースからの空気のみを吸えるようになった。
ということでできたのがこちら↓
鼻が伸びた
これで鼻が伸びる。
鼻が伸びたらランドリーの匂いをかげる。
さあ、かいでみよう。
なぜか竹やり気分に
ゾウのつもりがヤー！という気分だった。人は長いものを両手で持つと、竹やりを持ったもんぺ姿のご婦人方のように、ヤー！と言いたくなるのだと初めて知った。
しかしできた。かげた。これでいく。今後は色々なコインランドリーを回り、評価をしていく。
なお、評価はミシュランにならい三ツ星で評価することにした。ランドリーという人々のプライベートな部分をかぐのは見た目に相当危なっかしい。咎められたときにはミシュランの調査員だと言えば何とかなるかもしれないという淡い期待も込めてのことだ。
星の意味はこれまたならって以下の通り
１．小さいコインランドリー
先ほどから登場している、近所の個人商店のそばにあるランドリー。乾燥機はＳＡＮＹＯ製が２台と小規模。その代わりといってはなんだが、おばちゃんがやさしい。
僕の思うコインランドリーの匂い
排気をかぐとやはりガスの香りが少しする。やばいかもしれない、という気持ちとは裏腹に、匂いは強さを増すばかり。閑静な住宅街で鼻を2mに伸ばしてかぐ背徳感が匂いを強めている。洗剤、ドライヤー、ガス、ソフターの匂いが交じり合ってこれぞ生活という匂いがする。いい匂いだ。しかしいい匂いである。初っ端だが三ツ星にふさわしい。
排気は吸っても大丈夫なのか？ （乾燥機メーカーの方に話を聞いた）
――乾燥機の排気って体に悪いんですか？
いや、そんなに悪いもんでもないというか、ガスを燃やして熱風を出してますから、まあ普通の燃焼した後の空気と思ってもらったら。悪いとしたら二酸化炭素が多いことですかねえ。
――じゃあ吸いまくっていいですか？
いやあ、そら何でも限度ってもんがありますからねー。
→ほどほどにしとけ
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