安全ピンがなぜ安全なのか分からない。だって針があるじゃないか。その時点で危険だが、特にあの針のカバーみたいな所から針を出すときに針が勢いよく出てくるのがとても怖い。安全じゃない。
いやもちろん昔使っていたピンに比べたら安全だから安全ピンと呼ぶのは分かっている。普通のピンに比べての安全なのだ。それは分かってる。分かってるんだけどやっぱり納得がいかない。
だから本当に安全な安全ピンとはなにか、探求してみたい。
(text by 小柳健次郎)
気をつけろ!安全ピンは危ないぞ!
何が危ないってとにかくこれだ。
ほかにこんな凶器みたいなものが付いてる文具があるだろうか。それは挙げればカッターとかいろいろあるだろうが、安全ピンの怖さはそういうのでない。
例えばカッターをライオンとしたなら、安全ピンはスズメバチだ。
カッターの刃を取り出すときは刃に直接触れることはなく、扱うときは常に手で握る。要は危険が大きい分、刃から人体を守るための機構がしっかりしているのだ。これはライオンは常に檻の外から見るのに似てる。
たいして安全ピンの方は直接針に触れなければならない。だからカッターより危ない。スズメバチと出会うときは檻のように隔てるものがないのだ。
だから日本でライオンよりスズメバチの被害の方が多いのと同じように、カッターより安全ピンの方が数倍危ない。数倍怖いのである。
とにかく針が危険がなのだから針を取り除けばいいはずだ。針を取り除いてみた。
針のない真に安全な安全ピンが出来た。と思ったが、これではピンとして機能しない。安全ピンから針をとったらそれはもう単なるステンレスでしかなかった。
これではなんの解決にもならない。なにか針より安全で代わりになる物はないか。
これならあの針に比べて安全だ。さわり心地も何となく安心感がある。
しかし一番の心配はつまようじがちゃんと布を貫通するかだ。
ダメだった。つまようじは針に比べて貫通力が低く、服に通すことは出来なかった。安全と引き替えの貫通力。つまようじ本来の用途を考えるとあまり貫通力があっても困るから、それでいいんだと思う。
針の代わりにつまようじを使う方法は失敗だった。いちいち針も折らなければいけないので手間もかかるし。なので次に考えた方法は、針自身の先を丸くしてやろうという作戦だ。
つまり針先に半田を付けて丸くすれば危険は薄まるはず。人間でもそうだろう。「お前、丸くなったじゃん」って。
失敗だ。半田は針の先にうまく付着することなく、滴るしずくのようにぶら下がっただけ。針はバッチリ飛び出てる。
もはや物質面では打つ手ないのかもしれない。ならば次は精神面で攻めてみたい。