すべての矢印は佐藤耳鼻咽喉科に通ず
結局ぐるっと回った末、最終的にはさっきの耳鼻科についてしまった。
なんだか腑に落ちなくて、このあともう1回やった。駅から東急の線路をはさんで反対側からスタートしてみたのだ。そちらはかなり大回りのコースとなったものの、結果は同じ。最後にはあの耳鼻科に行き着いてしまった。
「すべての道はローマに通ず」というのは、古代ローマの時代にフランスの詩人が言った言葉だそうだ。当時、土木技術に優れた古代ローマの交通網は非常に発達しており、その繁栄をたたえる言葉だった、と言われている。
ひるがえって現代、緻密に張り巡らされた矢印網は、現代人の地理感覚を支え、同時に交通整理も行っている。その繁栄の頂点に立つのが佐藤耳鼻咽喉科である…ということはなくて、やっぱり単なる偶然だろう。ただ、何気なく生活している街の中にこういう「見えない行き止まり」みたいなものが潜んでいるのだと思うと、なんだか面白い。
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