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はっけんの水曜日
 
おめでたい雰囲気になる人形


 最近何をやっていてもむなしさを感じる。 時折こういう時期があるのだけれど、楽しいことでも素直に楽しめなかったり、もっと面倒なときは楽しいのにむなしい、なんて考えてしまうことがある。

  何か起こらないかなあ、と期待しつつも何も起こらない。そんなメランコリックな日々を打破するために、ぱかっとおめでたい気分になれる装置をつくってみることにした。

(text by 藤原 浩一

むなしさをやっつけろ

 大学3年生も終わりに近づき、ぼんやりとした生活を送っている。村上春樹の「ノルウェイの森」から女の子と死の要素を取り除いて、実家暮らしを加えたようなぼんやり感だ。

退屈な日常(イメージ)

 そんな最中、この間海老一染之助・染太郎さんの特集をテレビで見た。染太郎さんはすでに亡くなっているが、今でも彼らがテレビに出るとあたりがおめでたい雰囲気になる様子は頭に浮かぶ。

 そんな彼らを模した「おめでとうございます装置」を作ればむなしい気分もどっかへ行って、明るい雰囲気になってしまうのではないか。

 つまり、和傘でまりやますを回す、アレ。あれをいつでも再現できるようにしたい。

 本当なら自分でできれば間違いなくおめでたい気分になったのだろうけど、ここのところ膝と腰が痛くて激しい運動のようなものはできない。なので、そういう人形を作って代わりにやらせてみることにした。(なんて理由なんだ。)

人形用の傘

 

人形をつくる

 最初は紙ねんどで頭と腕を作ろう。乾くまでに時間がかかりそうだったので。

 くるくるとねんどを丸めて頭にしたり、ぐにゅっと伸ばして腕にする。ねんどって楽しい。既に退屈をやっつけている感じがするが気にしない。

頭と

胴体

 ねんどを乾かしつつも、今度は着物と袴をつくる。着物と袴の構造がどうなっているのか詳しくは知らないので、それっぽく仕上げるにとどまった。

布はなみぬい

チマチョゴリっぽいかも

 最後に腕と頭をくっつけたあと、水彩絵の具とペンを使って顔を完成させる。自分自身の傾向から言って、立体模型の顔を描くのがすごく下手なので細い目を入れるだけにとどめておいた。

 髪の毛もたくさん書き過ぎると変になりそうだったので、ちょっと薄めでストップ。よくわからないが「師匠」という雰囲気になった気がする。

色塗りも楽しい

眠そうな顔になった

 あとは和傘の下にモーターを取り付けて、うまく回転するようにすれば完成だ。

箱の裏にはおめでたさを可能にするギミック

表にはおめでたさの象徴

合体!


いつも通りに回しています


 なんだろう、めでたさとはまったく反対の空へ行くようだ。傘で転がすマスの中に鈴を仕込んだのが切なさをより一層深いものにする。途中からそんな気はしていたが。うーん。

 とりあえず良さそうなタイミングでこの装置を使って、おめでたい雰囲気を演出してみるのみだ。一晩かけて作ったので失敗とは言わせない。

 

この人形は一体何なのか

 ビデオを返し忘れて延滞料金を支払うはめに陥ることが多い僕が、今日は余裕をもって返却に間に合った。こういう小さなポイントでもお祝いができなかなあ、とそんな時にこそあの装置だ。

やり遂げた充実感

おめでとーございます


 じっくり見ているとなんだか鼓舞されているような気もしてくる。「俺も頑張ってる。お前も頑張ったな」みたいな。幻覚を見ているのだろうか。

 さて、一仕事したらおなかがすいた。よく考えたら今日はなんと朝マックが食べられる時間に外出することができている。いつもならこの時間は寝ているか時間ギリギリで移動中だ。

 ぜひ食べに行こう。


久々に見る朝マックだ

鼓舞してくれる

 やっぱり染之介・染太郎さん的なめでたさはどこにもない。途中から気付いていたけど。

 めでたさはないのだけれど、なぜかだんだん愛らしくなってきた。ひとまずおめでたさはあきらめて、がんばって作った人形と一緒にさんぽしてから帰った。

南君の恋人

人形とブランコ

何もない

 一見からくり人形のように見えて、からくりは外部に据え付けてあるただの人形。つまりこの人形にはむなしさしかない。むなしさしかないことによって、この人形には愛らしさがあるのではないだろうか。

 そういう人に僕はなりたい。

うふふ

 
 
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