皆さんは万歩計を使ったことはおありだろうか? 万歩計というのは山佐時計計器株式会社の登録商標で、正確には歩数計と呼ぶらしい。 歩くというのはずいぶん健康にいいようで、電気屋さんの店頭にも、たくさんの歩数計が並んでいる。 さてこの歩数計、実際の歩数をどのくらい正確にカウントしてくれるのだろうか?
(工藤 考浩)
歩数計を買ってきた
僕がまだ子供の頃、家に歩数計があった。 この当時の歩数計は、中に重りのようなものが入っていて、それが歩くたびにカラコロと動くことで歩数を計測していた。 子供心に本当にこんなので正しい歩数が計れるのか疑問に思ったものだ。 その疑問を今回の記事で解こうと、電器店の歩数計売り場へと向かったのだが、どうも昔とは様子が違うようだ。 歩数計の計測方式が、以前のものよりも進化しているようなのである。
加速度センサー
売り場に並んでいるどの商品も「加速度センサー採用でより正確に!」というような宣伝文句がついている。 やっぱり昔は不正確だったんだ。 ほかの店を探してみても、昔ながらの歩数計が見つからなかったので、最新の加速度センサー式歩数計の正確さを検証してみよう。
スタート
今回の計測は、カチカチと親指で押して数字を増やすカウンターを使い実際の歩数を数えながら、万歩計の数値と見比べる方式で行なう。 それぞれの数値をゼロにリセットして、測定開始だ。
すごく正確だ
歩きはじめて数分、着実に歩数を重ねてゆくが、歩数計はとても正確に歩数をカウントしている。 実際に数えた歩数が310歩で歩数計の数値は312歩を示している。 誤差は0.6%程だ。 最近の歩数計はとても正確です、おわり。 というわけにもいかないので、もうすこし歩いてみよう。
誤差が開いた
もう少し歩数をすすめて、812歩のところで歩数計を見たところ、837歩を示していた。 誤差がおよそ3%に広がった。 しかし、立ち止まって歩数計の数値を確認するたびに歩数計に振動が加わって、歩数が増えてしまっているのだ。 これまでに10歩ぶんくらい余計に計測されているので、誤差は2%程度だろうか。 それでもかなり正確だ。
階段はどうだろう
つまらない。 こんなに正確だなんてつまらない。 もっと適当な数値が出てほしかったのだけれど、困ったことに正確なのだ。 どうしようかなと思ったところ目の前には歩道橋があった。 階段を昇り降りして歩数計にいじわるしてやろう。
19%も
へへへ。 やはり歩数計は階段が苦手なようだ。 歩道橋を渡るあいだの歩数は57歩で、歩数計が示したのは46歩だ。 誤差は約19%である。 これは、階段を昇る際には踵を着かないので、その分センサーがうまく機能しなかったのではないかと思われる。
さらに歩いた
歩道橋で機械に勝ったので、とても良い気分で歩みを進めた。 幹線道路や住宅街や商店街を通り抜け、30分ほど歩き続けた。
やっぱり正確だ
くやしいけれど、歩数計は正確だ。 ここまで歩いて、歩数の差は57歩。 2%以下の誤差しか出ない。 むむう。 これではくやしさばかりが残るので、公園でスキップしたりすり足で歩いたりして、歩数計を困らせてしまおう。
立ち入り禁止でした
と思って、中野区役所の隣にあるちょっと広い公園に行ってみたら公園が立ち入り禁止になっていた。 公園封鎖だ。 公園ではない一般公道で、スキップとかすり足とかをするのはいささか気が引けるので方針を変更しよう。 公園沿いの直線道路をしっかりまっすぐに100歩あるいて、歩数計の精度を再確認することにした。 歩数計を出したり引っ込めたりして誤差が出ていたのを補正するためだ。
誤差1%以内
100歩を数えながら直線を何度も行ったり来たりしたが、 その誤差は1歩分あるかないかだ。 歩数計がきちんと計測できるように気を配って歩いてあげると、限りなく正しい歩数が計測されることがわかった。
すごいな歩数計
こんな小さな機械なのにとても正確なのだ、歩数計は。 すごいな、立派だなと思う反面、やはりくやしさは隠せない。 人間としての誇りを取り戻したい。 そこでバスだ。 バスならどうだ。
バスの振動でどうだ
これだけ繊細な加速度センサーなのだから、バスの揺れで歩数をカウントしてしまわないだろうか。 ただバスに乗っているだけなのに数字がどんどん増えていったら、ざまあみろだ。
完全に負けだ
歩数計はバスの振動を歩数として数えない。 ずっと数字は0のままだ。 しかも、バスを降りる時にはちゃんと歩数をカウントしていた。 僕は数え忘れていたのに。 というわけで、歩数計はかなりよくできた機械だ。 すばらしい。 気がつくといつの間にか歩数計と勝負しているような気持ちになっていたが、僕のほうが完敗だ。 将棋の名人にはまだコンピューターが負けるようだが、歩数計は僕に勝った。