やや関東ローカルの話題で少々恐縮なのだが、浜松町という駅・地名がある。特に駅としては、羽田空港につながる東京モノレールとJRとの乗り換え駅として知られているだろう。
今回私も、空港に用事があって浜松町にやってきた。写真にもあるように、交差点の表示も浜松町になっているのだが、どうも様子がおかしいのだ…。
(小野法師丸)
浜松町に来たのは確かなのだが、どこにもモノレールが見当たらない。すごく高いビルもあった気がするし、東京タワーも近かったと思うのだが、どれも全く姿が見えないのだ。
ちゃんと浜松町という名前のバス停もある。うーん、探しているのはバス停ではなくてモノレールなのだが…。どうやって空港まで行けばいいのだろう…。
と、そのとき、電柱に張ってある町名表示に気がついた。
くっきり浜松町と書いてある上のところに、「西区」と書いてある。あれ…?確か浜松町って、東京23区で言うと港区になるんじゃなかったっけ?そもそも東京に西区っていう区はないよなあ……。
あー、あれー?
もしかして、西区って、横浜市の西区?確か横浜市は18の区に分かれていて、その中に西区というのがあったはずだ。
ああそうだ、やっぱりここ、横浜の浜松町だ。間違えた〜。
何やってんだよー。もう飛行機も間に合わないよ〜。
●軽井沢でテニスひとりぼっち
飛行機にも乗れなくなってしまったので行き先変更だ。たまにはテニスでもして体を動かそう。そうなると行きたくなるのはテニスの本場、軽井沢だ。
しかし、ラケットを構えてはみたものの、ちっとも球がこない。脇を車がビュンビュン通り抜けていくだけだ。
まあそのうちみんな来るだろう。それまでひとりでラケットを振って、体をあたためておこう。素振りは練習の基本中の基本だからだ。
よくよく電柱を見ると、「三ツ沢下町駅」が近くにあるらしいことが読み取れた。三ツ沢?確か横浜市内にある競技場でよく知られているところだった気がするが…。
近くの歩道橋には「西区北軽井沢」との表示。西区?軽井沢ってそんな風に区分けされてたっけ?
うーん、もしかして…。
あー、またやっちゃった。ここって横浜だろう。
●原宿で違う自分デビュー
どうも今日は調子がおかしい。気分転換に奇抜な服装でもしてみようか。そう思いついたとき、思い浮かんだのは原宿。斬新なファッションに身を包んだ若者たちがたくさんいる街だ。
そういう街に私も参加してみたい。よし、とっておきの服を着て行ってみよう。
到着した原宿。町名表示でもしっかり原宿一丁目と確認できる。
ファッションに興味のある若者たちが刺激を受けあったり、情報を交換したりする街だとも聞いている。自分もぜひその輪に入ってみようではないか。
公園にいる人たちはみんな普通の服装をしている。
その人たちがこちらに気がついて少しの間視線を向けていたかと思うと、数秒後には見なかったことにして再び遊びに戻ったように見えた。この街に受け入れられている気がしない。
何かがおかしい。こんなはずでは…。
公園の近くにある掲示板にも「原宿町内会」と書かれていて、ここが原宿であることを再確認できた。ただ気になるのは、不審者を見たら交番へ、との呼びかけがあることだ。
もしかしたら、僕がこの街にいられる時間は限られているのかもしれない。
改めて掲示板全体を見てみると、左上の方には「ヨコハマはG30」とのポスターが。そうそう、横浜市はこのキャッチフレーズでゴミを減らそうと呼びかけていることは知っている。
えー? ということは、ここって横浜?
あー、間違えた〜。奇抜なのは自分だけで変だなあと思っていたのだが、そういうことだったのか。交番に連絡がいかないうちに原宿をあとにした方がよさそうだ。
●茅ヶ崎で無謀にサーフィン
どうにもこうにもおかしい。こういうときは細かいことは気にせず、自然と一体化するのが一番だ。そう、茅ヶ崎の海でサーフィンでも楽しもうじゃないか。
加山雄三やサザンオールスターズにもゆかりがあるおしゃれな街だ。さあ、サーフィンするぞー!
そういうわけでやってきた茅ヶ崎。その名を冠した大きな公園もあった。
夜の海は冷たいかもしれないが、孤独を癒すのにはいいところでもあるだろう。さて、サーフィンの準備をして海を目指そう。どこにあるかな…。
すっかり暗くなってしまったからだろうか。海が見当たらない。
公園内ということで、ウォーキングや犬の散歩をする人たちの姿を見かける。こちらに向かってくる人影を確認したら、一度キャップとゴーグルをはずす。
闇が広がる向こう側が全て海なのだろうか。そんなに風に前向きに考えてみるものの、それにしては波の音も潮風も感じられない。
どうもおかしい。変だなあと思って、もう一度先ほどの掲示板に戻ってよく見てみる。
横浜市って書いてある。あれー、ここって茅ヶ崎は茅ヶ崎でも、横浜にある茅ヶ崎なのか?
なんだー、そうなのか…。
この掲示板には不審者云々のことは書いていなかったが、それは書いていないだけであって、不審者を見かけたら交番に通報する人は多いと思う。この茅ヶ崎にも私は歓迎されていないようだ。
●旅の果ては奈良で自分と向き合う
今日は散々な日だった。こういうときは、寺社仏閣を訪れて、自分を見つめなおすのもいいだろう。そう思った私に思い浮かんだのは、いにしえの都、奈良だ。
横浜から奈良はかなり遠いはずだが、思っていたより早く着いた。
街にあった掲示板にも、くっきりと奈良の表記が。ここが間違いなく奈良であるということが確認できる。
掲示板のすぐそばには大きな公園がある。ここがきっと鹿で有名な奈良公園なのだろう。
車で奈良を移動中に見えた動物も、「鹿か?」と思う間もないほど、はっきりと犬だ。
もう一度さっきの掲示板に戻ってみよう。
掲示板の表記を確認すると、「奈良一丁目自治会」と書いてある。自治会はいいとして、「奈良一丁目」というのは変ではないか。都道府県名である奈良のあと、いきなり一丁目が続くというのはおかしいだろう。
奈良公園だと思っていた公園も、入り口のところで名前を確認したら、奈良山公園。ちょっと違うなあ。
ふと目についたのは、掲示板の横に立っていた看板だ。
そこには「横浜市」との文字が。どうやらここは、横浜市青葉区にある奈良であるらしいのだ。
道理でおかしいと思った〜。大仏もお寺も鹿もないんだから。横浜にも奈良があるんだねー、うっかりしたよー。
●横浜うっかり漂流記
最後まで小芝居に付き合ってくださってありがとうございました。横浜にはよく知られている場所と同じ地名がたくさんあるという話でした。
新年早々かなりのうっかり記事となりましたが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。