東京の下町、隅田川にかかる新大橋。そこから見える秋の夕暮れの一コマである。斜張橋のワイヤーが画面を大胆に横切るこの写真の中で一番の見どころは何だろうか。
それはビルの上の「鳥の巣」だ。
(text by 大山 顕)
■ぜったいこれが好きな人いるはず。
ビルの上の「鳥の巣」とは上の写真のこれ。ビルの上の広告を入れるための骨組みのことだ。ぼくが今勝手に名付けた。
町を見回すと、案外とこのように広告が入っていない状態のものを見かける。広告で成り立っている世の中でこんなこというのはなんだが、広告が入っていない方がかっこいい。この骨組みがざわざわと複雑に組み合わさっている視覚的喜び。今日も上を向いてぼくは歩く。
このビルの上の鳥の巣がなんとなく好き、って人はいるに違いないと思う。そう信じて今回はこの巨大な鳥の巣を収集鑑賞してみた。ついてこい。
どうだろうか。先のものに比べるとやや古びた感じがまたよい鳥の巣作品だ。よく見ると一番下の太い部材の部分が複雑な形をしている。一見どれも同じに見える鳥の巣が実は一点一点オリジナルであることを感じさせる。
しかしここにもゆくゆくは広告が入ってしまうのだろうか。周囲は消費者金融の広告ばかりだが。
こちらは細長い鳥の巣。頑丈な三角柱状の名品である。見れば見るほどそのバリエーションの多さに驚かされる。ウェブのバナー広告より自由だ。
この鳥の巣の鑑賞ポイントはやはりハシゴだろう。高いところは苦手なぼくだが、これはのぼってみたい。いや、やっぱりこわいな。いやでもせっかくだから。いやいや、でも…オファーを受けてもいないのに葛藤しながら鑑賞する新宿の夜。右ハシゴの上部はおそらく照明が入る場所だろう。広告入っていなくても鳥の巣を煌々と照らし上げればよいのに。
こちらはすでに広告が入っているものの上に乗っかる形の鳥の巣。これまでのものにくらべると横方向の構造が目立ち、個人的には見た目にあまり面白味がないと感じる。しかし、鳥の巣の好みは人それぞれ。自分好みの鳥の巣は、ぼくに遠慮することなくむねをはってそう主張してほしい。
あと、広告募集の看板が貼ってあるが、そんなことをしたら広告入っちゃうからやめてほしい。