先日、「コワモテでネコにモテモテ」という記事を書いた。自分がコワモテになったのはともかく、登場したネコたちもかなりのコワモテだった。
しかし驚いたのは、記事を読んだ方たちから「ネコがかわいい」といった感想をいただいたことだ。ちょっと待ってくれ、あの記事のネコは相当おっかなかったはずだぞ。
感じ方は人それぞれというのは当たり前のことなのだが、「動物=かわいい」というイメージはかなり強いものだと思う。今回はそこに疑問を呈したい。動物に「かわいくなさ」を求めたい。
そういうわけで、自分の中の鬱屈した気持ちをどうにかするために、動物園に行ってきました。
(小野法師丸)
●動物たちに対する屈折した気持ち
「動物=かわいい」という強固な図式。確かにそれは認めざるを得ないのだが、それゆえに抵抗したい気持ちにもなる。
中学生の頃、クラスの女子たちが動物に対してあげる「かわいい〜」という歓声をどれだけ苦々しく思っていたか。あの頃の気持ちを忘れたくはない。
そういうわけで、動物のかわいさに一石を投じるべく動物園にやってきた。動物の中にもかわいくない種類のものがいていいはずだし、かわいいとされる動物にもかわいくない瞬間があるはずだ。
では、動物のかわいくなさを判定するにはどうしたらいいだろうか。
今回の取材には妻にも同行を願った。普段から「動物=かわいい」派に属する妻、今回の取材に当たっても、「かわいくない動物なんて死骸くらいしか思いつかない」とのコメント。
死骸…。これはかなりの難敵だ。こういう人から動物に対して「かわいくない」という言葉を引き出したい。それがうまくいったらミッション成功とすることにしよう。
さて、まずやってきたのはポニーコーナー。
しばらく眺める。うん、やっぱりポニーはかわい……。
あぶないあぶない、何を言ってるんだ、私は。そういうことじゃない。ぽろんちゃんに惑わされている場合ではない。つぶらな瞳から目を反らせ、これが向こうの作戦なんだ。相手のペースに乗せられてはまずいのだ。
危険だ。気をしっかりもたなくては。
それぞれのかわいさを強烈に放つ動物たち。パッと見からかわいい動物たちはチラッと見てスルーだ。そうしないと自分の心が負けてしまう。
妻も「かわいい〜」を連呼。その声にハッとさせられる。
これでいいのか。今回の目的はこうした声に抵抗することではなかったのか。自分の中の動物たちに対する様々な思いが頭をもたげてくる。
心の中の光と闇を行き来しつつ、やってきたのはカンガルーコーナー。
ここには「ベギラマ」という名前のカンガルーがいるらしい。聞いたことのあるこの言葉。ご存知だろうか、ゲーム「ドラゴンクエスト」に登場する、攻撃魔法の名前なのだ。
語感としてもかわいくない感じのベギラマ。これは期待できるのではないだろうか。
まずい、これはかわい…。
ぶるぶるぶるぶる、ダメだダメだ。目を見ちゃダメなんだ。自分の頬を両手でピシャンと叩く。クラスの女子の「かわいい〜」を思い出すんだ、しっかりしろ。
せめぎ合う二つのの気持ち。そこを突くようにしてカンガルーは攻めてくる。
まずいって、ここはまずいって。あんまり長い時間見ていると、気持ちがどうにかなりそうだ。いったんギュッと目をつぶる。暗くなった視界の奥に、動物に対する負の感情を思い起こす。
自分の中の折り合いをつけることすら難しい。なんとかして動物のかわいくなさを見出さなければ。