毛が生えてるカニだから、毛ガニ。ならその毛を剃るとどうなるのか。やっぱりただのカニなのか。
そんな大事な毛を剃ることで果たして毛ガニはどうなってしまうのか、毛ガニのアイデンティティーは儚く消え去るのかどうか、剃ってみました。
(text by 小柳健次郎)
毛を剃る場合の毛ガニの選び方
毛ガニを選ぶに当たっては、甲羅が堅いのがいいとか、茶色くなってるのがいいとかいろいろあるが、それはうまいカニの見分け方だ。今回の目的は毛を剃ることだから、とにかく毛が多いのを選べばいい。なんて簡単な選び方だろう。
なるべく毛が多いのを選んだつもりだが、実際のところ毛の量の違いなんてちっとも分からない。毛ガニ界にはハゲとかそういう概念はないみたいだ。ちょっとうらやましい。
ひげ剃りで剃ってみる
人間で毛を剃ると言えばひげ剃りである。
だからといってそれがそのまま毛ガニにも通用すると考えるのはあまりに頭が悪いが、毛ガニの毛って男の無精ひげに少し似てるのでわりかしいけるのではないだろうか。
なお毛を剃る前と後を比較するために、毛ガニの向かって左側だけを剃っていきたいと思います。
では最初はハサミから。
剃れた。根本からツルツルとはいかないが、無造作に生えてた毛がビチッとした角刈りになった。毛ガニにひげ剃りは有効か。
いや全然有効じゃなかった。
毛ガニに対してひげ剃りのサイズがちっとも合ってないから、細かいところやデコボコした部分の毛を剃ることができない。なんせひげ剃りの直径がカニの脚の2倍ぐらいあるのだから。これは人間にたとえると、アゴを直径30センチのひげ剃りで剃るようなもんです。
しかもカニの毛はすごく毛詰まりする。毛質としてはそれほど堅いというわけでもなく、「若干強固な眉毛」程度なのだが、すっかりひげ剃りがダメになってしまった。毛ガニのプライドがそうさせたのだろうか。
カミソリはどうか
ひげ剃りはなんというか案の定ダメだったが、ここからはカミソリを使おう。カミソリはひげ剃りに比べて柔軟性があるから、細かい起伏のあるところでも剃れると思う。 まった。毛ガニのプライドがそうさせたのだろうか。
剃れても三分刈りが限度
通常、剃るという動作は手前から奥に押したり、奥から手前に引いたりと、ある程度の動きをしないといけない。
しかしカニの脚の毛は表皮のトゲとトゲの間に生えていて、その毛を剃ろうとトゲとトゲの間にカミソリを突っ込んでしまってはもう身動きがとれず剃る動きが出来ないという恐ろしさ。
毛ガニの毛に対する執念を見た気がした。