と、まぁ、最初はそんな余裕もあった。まだ勾配もゆるく、自転車をこぎながら周辺の風景を楽しむこともできた。
しかし、徐々に坂道の傾斜がきつくなっていくにつれ、それもままらなくなってくる。まだ走り始めてさほど時間が経ってもいないのに、既に足腰がガクガクしてきた。
暑い。ものすごく暑い。夏なのだから暑いのは当たり前ではあるが、それにしても、暑い。
山間部の飯田とはいえ、夏の太陽は全くもって容赦ない。汗はとめどなく流れ、下を向いただけでボタボタと地面に滴り落ちる。
既にシャツはびしょぬれだ。パンツの中までびしょぬれだ。
さらに追い討ちをかけるように、ドーンとかパーンとかいう音がひっきりなしに響いている。猟銃の射撃音だ。かなり近い場所で猟をやっているようで、その音は相当でかい。思わず恐怖を感じてしまう。どうか流れ弾が飛んできませんように。 |