デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


ロマンの木曜日
 
家の鼻の穴


上を見ながら住宅地を歩いていると、かわいらしい穴を見つけることができる。それは、家の鼻の穴。それを今回は鑑賞していきたい。何のことかわからないかもしれませんが、写真見たら「ああ、これか」ってなると思います。鼻の穴。

(text by 大山 顕



その穴とは、専門的には「小屋裏換気口」と呼ばれるものだ。切り妻屋根を持った住宅の妻側(屋根が下りている面ではなくて、壁の面のこと)の上のほう、屋根と天井の間、つまり屋根裏にあたる位置に取り付けられた換気のための穴。

換気扇や窓を開けての換気が意識的な換気プレイだとすると、この小屋裏換気口は小さいながらも絶えず開いている、いわば家の呼吸口。鼻の穴だ。

高気密、高断熱な最近の住宅では、この鼻の穴はきわめて重要な役割をおっているのだが、そういうことは比較的どうでもよくて、外側から見た際の、その穴に施された装飾を愛でていきたい。キュートなんだよ、この穴が。どうしてこれ集めたサイトがないのか不思議だ。

 

■田の字タイプ

まあ、写真を見ていただこう。下の写真郡がそれである。すべて小屋裏換気口の写真です。覚悟してください。

今回、住宅街を自転車で小屋裏換気口を見て回って、その装飾にはパターンがあることに気がついた。以下の「田の字タイプ」と勝手に名づけたものは、古い住宅に多く見られ、個人的には一番気に入ったタイプ。


 

■アレンジ田の字

そんなキュートな田の字タイプにやや手を加えた、といった感じのものが以下の作品たち。いずれもアレンジがよい方向になされていると思う。もって帰りたい。あと「アレンジ田の字」って韻を踏んでいてよい。


 

■社タイプ

これも勝手に命名している。社(やしろ)タイプ。どことなくお地蔵さんとかが祭ってある社に見えませんか。雰囲気としては上記田の字タイプに近いものを感じる、和風鼻の穴である。これももって帰りたいなあ。


 

■ハの字タイプ

切り妻の傾斜に合わせるようにデザインされているのが、このハの字タイプ。どちらかというと、目立たないことを旨とした造形かと思われる。このタイプの味わいがわかってきたら小屋裏換気口鑑賞家として一人前といえるだろう。玄人向けデザインである。たぶん。


 

■矢羽タイプ

だいじょうぶだろうか。みなさんついてきているだろうか。いや、ついてこなくてもいいのだ。注目されずとも黙々とその使命を果たす。小屋裏換気口とはそういうものだ。そりゃそうだ。

さ て、次は田の字タイプと共に小屋裏換気口マニアのあいだで絶大な人気を誇る矢羽根タイプ。シンプルな中にも絶妙な造形バランス感覚が必要とされるそのデザ イン。「矢羽根10年」と言われるゆえんである。矢羽根タイプを一人前に仕上げられるようになるには10年はかかる、という意味である。たぶん。聞いたこ とないけど。


 

■鼻の穴がない!

こ こまで、つぎつぎと小屋裏換気口をご紹介してきたが、実はこの鼻の穴がない物件も多くあるのだ。この記事で週末大量発生すると思われるにわか小屋裏換気口 鑑賞家にはその旨しっかり伝えておくのがぼくの義務だろう。簡単に見つかると思ってもらっては困る。小屋裏鑑賞は1日にしてならず。たぶん2日ぐらいだ。


 

■ザ・鼻の穴

小屋裏換気口が家の鼻の穴なら、いっそのこと鼻の穴然とさせてしまえ、と言わんばかりのタイプ。なんかかわいい。


 

■付け鼻タイプ

円形のあながちいさめに2つあいているところは上の「ザ・鼻の穴」に似ているが、なにやら余計な設備がマウントされている。穴を装飾、という意味では田の字タイプも矢羽根も考え方は同じだが、この付け鼻タイプはすこし風情に欠ける。


 

■小窓タイプ

換気面積を大きくとったタイプ。熱を、こもらせは、しない。熱、ダメ、ぜったい。という意気込みが感じられる実践重視の鼻の穴。個人的にはもうちょっと鼻の穴は慎ましくいてほしいと思う。


 

■山型タイプ

古めの住宅でよく目にするのがこの山型タイプ。格子の走る方向、色、形などのバリエーションが豊富なのも特徴だ。小屋裏換気口鑑賞家のなかでも、この山型だけを専門にする一派がある。きっと。


 

■鼻の穴兄弟

これまで鼻の穴そのものにクローズアップしてきたが、以下ではそのコンビネーションに注目したい。二階建て住宅の一階と二階に並んでいる様子を見てみよう。


 

■そのほか

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。誰かついてきただろうか。だいじょうぶか。

さて、分類しがたいものや、換気口鑑賞家なら特に注目したい作品などをご覧いただき、締めくくろう。


■とても楽しかったです

よく見たら鼻の穴がありました。鼻づまりだろうけど。

分かりにくさ、ここに極まれり、といった感じの今回の記事だったが、どうだっただろうか。

建築基準法では小屋裏換気は必須ではないそうだが、こんなかわいらしいものは義務化すべきだと思う。


 
 
関連記事
百穴、のち、土蜘蛛人
あきらさんのもので溢れる『あきら書房』
巡礼・ほっ立て小屋

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.