ロックのライブを見に行く度に、「ギターが弾けたら、さぞ楽しいだろうなあ」と毎回思うのだが、残念ながら子供の頃より楽器の類はすべて不得手で、音感というものも持ち合わせていない。
でもやっぱりギターが弾きたい。ロックンローラーになってみたい。しかし、今更ギターの練習を始めたところで、覚える速度よりも忘れる速度の方が早いに決まっている。
それならば、今からギターの練習を始めるのではなく、いっそ普段から慣れ親しんだ釣り竿とリールをギターにする方が早いのではないだろうか。釣りギター。エレキで。
釣り竿だったら弾ける気がするんだよね、漠然と。
(text by 玉置 豊)
バンドをやっている友人を呼び出す
釣り竿とリールでエレキギターを作ってロックンローラーになるのだと一人で張り切ったところで、なにをどうしたらいいのか全く見当がつかない。そこで、とりあえずバンドをやっている友人H君を呼び出してみた。
釣り竿とリールを使ってロックなギターを作りたいという、私の熱い想いを語ったところ、「俺、キーボードだからギターわからん」といわれてしまった。
そういえばそうだった。
仕方ないので、H君のバンドでギターをやっているS君を追加招集。ちなみにこの二人の所属するバンドをジャンルでいうと、「コミックバンド」になるらしい。
持ってきた釣り竿とリールを二人に見せて、「これはギターに成りえるだろうか」と尋ねたところ、「これはギターではなくて、竿とリールだ」と至極もっともな意見が帰ってきた。
しかし、楽器用の部品を無理矢理くっつければ、何らかの音がでるかもということで、とりあえず楽器屋さんにいってみることにした。
楽器屋へ行こう
「楽器屋といえばお茶の水」らしいので、お茶の水の明大通りを歩いて、適当な楽器屋を探し歩く。我々が買いたいのは、ギターではなく、釣り竿につけるギターのパーツなので、売っている店が限られているのだ。
ところで、お茶の水を釣り竿持って歩くっていうのはどうかなあと思っていたのだが、竿をロッドケースに入れてきたので、パッと見は「細長い楽器を持っている人」に見えていると思う。
私が持っているのがロッドケースであり、中身が釣り竿であるとは誰も気がつきまい。だからどうしたっていう話ではあるが。
楽器っぽいものを持ってお茶の水の明大通りを歩いたということで、少しだけロックンローラーに近づいた気がする。
部品を選ぶ
ギター部品をいろいろ扱っている店にやってきた。ここで釣り竿をギターに変える魔法の道具を物色する。
とはいっても、私にはすべてがちんぷんかんぷん。なにがなんだかよくわからないが、なるべく安いやつを見繕ってください。
楽器屋で釣り竿とリールを取り出して、あれやこれやと悩んだ結果、以下の物を購入した。各部品の説明は写真のキャプション参照。
実際は、これら以外にギターアンプとシールド(ギターとアンプを繋ぐコードの事らしい)が必要なのだが、それらはとりあえずS君に借りることとする。
釣りギター開発は失敗の可能性が高いので、買わなくていい物は後回しにしておきたい。お金は大事だ。
さあ、あとは釣り竿にピエゾピックアップをつけて、シールドつないでプリアンプに繋ぎ、さらにギターアンプに接続すれば、釣り竿が釣りギターの完成だ。たぶん。
ブリッジというのも必要らしい
これで釣りギターのパーツがそろったと思ったら、実はもう一つ、弦振動を支える最も重要な部品であるブリッジというものが必要らしい。
しかし、楽器屋には残念ながら釣り竿用のブリッジは売っていない。なぜなら楽器屋だから。かといって釣具屋にもそんなものは売っていない。
こんな時は東急ハンズの出番なのだが、そこまで行くのが面倒だったので、百円ショップで適当そうなものを購入。Cクランプ。いいのかこれで。
さっきから、H君、S君と釣りギターについて会話をしていると、「たぶん」とか、「おそらく」とか、「きっと」とかの、不確定を表す副詞がやたらと連発されているのが気になる。
なんだか漠然と不安だ。