セグウェイをご存知だろうか。尾崎豊さんが歌っていた。ひどく煙たい朝に目覚めるとおーれーはー、おーおーセグウェイ。あれはラブウェイか。ソバージュの速弾きギタリスト、いやそれはイングヴェイだ(どちらもわかりにくくてすみません)。倒れない電動立ち乗り二輪車、そう、それがセグウェイ。今世紀最大の発明と言われた商品、それがセグウェイ。ずーっと乗ってみたかったが、いまいち浸透してこない乗り物、セグウェイ。そんななんだかよくわからないけどあこがれていたマシンにようやく乗ることができました。
(安藤 昌教)
セグウェイ沖縄上陸
セグウェイがやってきたのは沖縄で開催された「IT EXPO沖縄2006」というイベント。最新の情報機器を展示紹介することを目的としている。そういえばセグウェイの開発がまだ噂段階だったころ、そのコードネームはIT(イット)だったと記憶している。今回の来場はそこにかけているのだろうか、と深読みしてみたのだが、どうやらある沖縄県内の会社がセグウェイの代理店と取引があるので、というだけのことらしかった。
僕はセグウェイがかつてジンジャーと呼ばれていた頃からずっと興味を持っていた。内蔵された複数個のジャイロとセンサーで二輪なのに倒れないように制御された乗り物、しかも名前がジンジャー。そんな得体の知れない乗り物はリニアモーターカー以来の近未来インパクトだった。しかし実際に動いている姿を見たのはブッシュ大統領と小泉前首相が乗っていたのをニュースで見ただけだ。あれからかなりの時が流れているが、町にセグウェイがあふれる日はいまだ訪れていない。
憧れのセグウェイが目の前に
イベント会場はたくさんの人で賑わっていた。情報機器の展示会というので、専門的な人たちばかりなのかと思ったら、意外にも高校生らしき制服の若者が多くて驚いた。やっぱりみんな目当てはセグウェイなのだろうか。
様々な最新機器の展示ブースを横目に、一路セグウェイへと進む。それらしき列に加わると、即座に係りの人が僕に体重を聞いてきた。どうやらセグウェイは45キロ以上、110キロ以下でないと乗ることができないらしい。僕はどうみてもその範囲に収まっているような外見だと思っていたのだが、改めて体重を聞かれて少し戸惑った。
そしてセグウェイは音もなく僕らの前に姿を現す。
係りの人がものすごいくねくねと自由に曲がりながら乗りこなしているこのでかいホッピングみたいな機械、これこそが充電式立ち乗り電動二輪車、セグウェイだ。最高時速は毎時20キロ、充電式バッテリーを使用し、環境にやさしい。
細部を見てみよう。リヤカーくらいの大きさの対になったタイヤの間に渡されたプレートの上に人が乗る。そこからにょきっとT字に伸びたグリップを握って運転するわけだが、握りにはスロットルもなければブレーキもない。加速も減速もカーブも、全てを体重移動で行うのだ。普通に考えたら絶対に立っていられない状況なのだが、セグウェイは高度に制御されているので倒れない。絶対倒れないんですか、と係りの人に聞くと、無理すれば倒れないこともない、と言っていた。
乗るよ、セグウェイ
ようやく順番が僕のところへ巡ってきた。どきどきしながら乗り込もうとすると、以下のことを注意された。
セグウェイは搭乗者の重心を感知して制御しているため、走っている最中に飛び降りるとどうしたらいいのかわからなくなってしまうらしい。一度そんな風に困らせてみたかったのだが、壊したら弁償できる見込みがないのでやめた。
プレートの上に立ち、ハンドルを握り、おそるおそる重心を前に傾けてみる。
スススススー
セグウェイは音もなく僕を乗せていよいよ動き始めた。驚いてブレーキをかけようとするが、そんなものない。一瞬考えた後、ハンドルを引っ張るように加重を後ろへずらすと、セグウェイは瞬時に止まった。
はじめはおずおずとぎこちなかったのだが、一通りぐるっと周ってしまうともう慣れる。自転車やバイクのように自分で運転しているというよりも、水上スキーやウェイクボードのように何かに引っ張ってもらっているといった感覚だ。
スススー、と進む感じをお伝えしたくて動画も用意しました。終始半笑いなのは楽しさ半分、怖さ半分だからだと思います。。
わずかな時間だったが憧れのセグウェイに乗ることができた。車軸の上に立っているので、慣れればかなり小回りが利く(ほとんどその場で回ることができる)。もう少し軽量なモデル(基本モデルが50キロくらいある)が出てきたら、これで飛んだり跳ねたりトリックが決められるんじゃないかと思った。これは確かに大発明だ。もっと身近になったらいいのに。
未来は近いようで遠いです
しかしセグウェイがいまいち一般に浸透しない理由は単に高いから(一番安いモデルでも70万円くらいする)だけではないと思う。今の日本の法律ではブレーキやら方向指示器やらを装備しないと公道で走ることができないのだ。だけど想像してみてもらいたい、これにブレーキが付いたら、おそらくかけた瞬間に前に転ぶ。加重の移動で制御されて完成されている回路に外部からブレーキをかけることは困難なのだ。要するに今の法律ではセグウェイを公道に送り込むことができない。時代が法律の管理できる枠を超えてしまったのではないか。せっかくの大発明が活かしきれない現状にはがゆさを感じるのでした。